「愛犬がしきりにかゆがる…」その症状、もしかしたらノミやダニかもしれません。
ノミ・ダニは刺されてかゆいだけではなく、深刻な二次感染を引き起こす厄介もの。室内飼いの子でも、家庭に持ち込まれたノミ・ダニに寄生されることがあるので油断は禁物です。
対策の基本は飲み薬やスポットタイプなどの予防薬ですが、「いつから使えるの?」「市販薬でも大丈夫?」と迷う飼い主さんも多いはず。
本記事ではノミ・ダニの特徴から予防薬の選び方、見つけたときの駆除方法まで、獣医師監修のもと詳しく解説します。

この記事の監修者:松本千聖先生
岐阜大学応用生物科学部獣医学課程を卒業後、3年ほど獣医師として動物愛護団体付属動物病院やペットショップ付属動物病院にて主に一次診療業務、ペット保険会社での保険金査定業務などに従事。
現在は製薬関係の業務に携わりつつ、ペットの健康相談業務、動物関係のライティングに加えてペット用品並びに犬猫の健康記事に関する監修経験多数。なおプライベートでは個人で保護猫活動並びに保護猫達の健康管理実施中。
犬のノミ・ダニとは?

犬につきやすいノミ・ダニは、「ノミ(ネコノミ)」「マダニ」「耳ダニ」の3種類です。
ノミ
ノミは体長1~3mmほどのごく小さな昆虫の仲間です。犬や猫に寄生するノミの大半は「ネコノミ」で、吸血する前は薄っぺらい体をしていますが、吸血したあとは豆のように丸く膨らみます。
マダニ
マダニは、分類としてはクモやサソリの仲間です。
吸血前は体長3~5mmほどで、丸っこい形をしています。吸血後は10~20mmほどの大きさになり、飼い主さんを驚かせることも。重篤な感染症を媒介するため、非常に厄介です。
耳ダニ(ミミヒゼンダニ)
体長0.3mmで目視できないほど小さなダニの一種です。耳垢や分泌物を好み、ガサゴソと耳の中を這いまわってかゆみを生じます。寄生されると黒い耳垢が大量につくので、それをきっかけに発見されることもあります。
ノミとマダニの違い
ノミとマダニの大きな違いは「動き方」です。
ノミは非常に素早い動きで逃げ回るため、探そうとしても見失ってしまいます。
一方、マダニは数日ほど動かずに吸血します。愛犬を撫でたときに、小さなでっぱりの感触で気づくこともあるでしょう。
それぞれが媒介する病気にも違いがあり、ノミは瓜実条虫やノミアレルギー性皮膚炎、マダニはバベシア症やSFTS(重症熱性血小板減少症候群)などを引き起こします。
ノミ・マダニが犬に寄生する原因は?

ノミ・マダニが寄生する原因としてよくあるのは「散歩中に公園の茂みや草むらを歩くこと」です。
ノミはジャンプして寄生する
ノミは地面や草の陰に潜み、散歩中の犬が近づくと体長の100~200倍ともいわれる驚異のジャンプ力で犬の体に取りつきます。
また、家の敷地内を野良猫や野生動物が行き来していると、家庭内にノミが持ち込まれることがあります。
マダニは草むらで待ち伏せする
マダニは野生動物が多い自然の中に生息しますが、市街地の公園や緑地にも潜んでいます。ノミのように高く飛ぶことはできないので、1mほどの高さの草むらに隠れ、犬や人間が通り過ぎるチャンスを狙って体へと乗り移ります。
室内飼いの犬もノミやマダニに寄生される?
草むらを歩く習慣がない犬でも、人間の衣服や持ち物にノミの卵や幼虫が付着し、そこから寄生されることがあります。室内飼いでもノミ・マダニ対策はしっかり行いましょう。
ノミ・マダニで注意したい季節は?
ノミやマダニは春から秋(3~11月)にかけて活発に活動します。
しかし最近は温暖化の影響で暖冬となる年も多いため、年間を通してノミ・マダニ対策を行うのが一般的です。生後何週から予防薬を使えるかについては、後述の「予防薬の種類と選び方」で詳しく解説します。
犬がノミ・マダニに寄生されたときの症状

ノミやマダニに寄生されると、どんな症状が現れるのでしょうか。
ノミによる症状
ノミに刺されると、蚊よりも激しいかゆみに襲われ、皮膚に赤い発疹が現れます。
さらに特徴的なのは「毛や皮膚についた黒い粒」です。これはノミの糞で、しっぽの付け根あたりによく見られることがあります。濡れたティッシュの上に取ってしばらく置き、赤く滲むようであれば吸血したノミの糞です。
マダニによる症状
吸血されると、かゆみや赤みが起こります。
ただしマダニは吸血時に麻酔に似た物質を注入するので、かゆがる様子がまったく見られないこともあります。
マダニで怖いのは二次感染です。マダニが媒介する病原菌により、SFTSやバベシア症といった病気にかかることがあります。
二次感染については詳しく後述します。
耳ダニによる症状
耳ダニは、しきりに耳を気にしてかゆがる様子が見られます。頭を振ったり、耳に触られるのを嫌がったりすることもあります。
コーヒーかすのような黒い耳垢がつくのも大きな特徴です。
犬のノミ・マダニを放置した場合のリスク

犬のノミ・マダニで怖いのは、吸血による貧血や病原菌などへの二次感染です。
吸血による貧血
長期にわたって血を吸われると、貧血を起こすリスクがあります。とくに体の小さい犬種や子犬は深刻なダメージにつながります。
ノミアレルギー性皮膚炎
ノミアレルギー性皮膚炎は、ノミの唾液に反応することで起こるアレルギー症状です。
ノミアレルギー性皮膚炎があると、一匹のノミに刺されただけで広範囲のかゆみや発疹を起こすため、非常に苦痛です。
瓜実条虫
瓜実条虫はノミを介して動物に取り込まれる寄生虫です。
グルーミングでノミを飲み込むと犬の体内に入り、腸内で成長します。便中やお尻の周りに白い粒(寄生虫の体の一部)が排出され、動いて飼い主さんをびっくりさせることがあります。
SFTS(重症熱性血小板減少症候群)
SFTS(重症熱性血小板減少症候群)はマダニが媒介するウイルス感染症です。発症すると食欲低下や発熱、黄疸、嘔吐・下痢などの症状を起こします。
バベシア症、ライム病
バベシア症やライム病も、マダニが媒介する病気です。
バベシア症は、バベシア原虫というごく小さな寄生虫によって起こる赤血球の破壊です。貧血を中心に、発熱や食欲不振などを起こします。
ライム病は、ボレリアという細菌によって起こる関節炎です。足を引きずり、触られるのを嫌がるようになり、進行すると急性腎不全を起こすことがあります。
人間への感染
ノミ・マダニは愛犬だけでなく、人間にも影響を及ぼします。
刺されるだけではなく、ノミに刺されてアレルギー症状(皮膚炎)を起こしたり、SFTSやバベシア症に感染したりするケースもあります。
ノミ・マダニを発見したら、すぐに治療と駆除が必要です。
犬のノミ・マダニはどうやって駆除する?

ノミ・マダニを見つけた場合、どうやって駆除すればよいのでしょうか?正しい手順について解説します。
ノミやマダニは潰さないで!
ノミやマダニを見つけても、決して潰してはいけません。潰したときに卵や病原菌が散らばり、さらなる増殖や感染をまねくおそれがあります。
ノミやマダニを捕まえたときは粘着テープにくっつけ、そのまま中性洗剤を溶かした水に沈めて死滅させましょう。
ノミが見つかったときの治療・駆除
ノミを見つけたら、動物病院を受診して駆除薬を投与しましょう。投与後数時間でノミが死滅しはじめます。
ノミ取り櫛やノミ取りシャンプーなどもありますが、駆除薬はノミの繁殖サイクルごと断ち切るので一番効果が高いです。
部屋の掃除も徹底的に行います。
ラグや家具の隙間には、ノミの卵が大量に落ちている可能性があります。卵は熱や乾燥に弱いので、洗えるものは湯洗いや乾燥機で駆除するのがベストです。
マダニが見つかったときの治療・駆除
マダニを見つけたら、動物病院で安全に除去してもらいましょう。
飼い主さんが自分でマダニを引きはがすのはオススメしません。無理にはがすとマダニの口器が体に残る可能性があります。
駆除薬を使って除去する場合、投与後数時間~24時間でマダニが麻痺・死滅します。
部屋の掃除も必須です。マダニもノミと同じく湿った暗い場所を好むので、物陰を中心に部屋のすみずみまで掃除しましょう。掃除機を使ったあとはゴミケースの中身をビニール袋に入れ、しっかり口を縛って密閉してください。
耳ダニが見つかったときの治療・駆除
耳ダニを疑うときは、顕微鏡を使った検査で耳ダニかどうかを確認します。
検査するときに耳垢が必要なので、動物病院を受診する前の耳掃除は避けてください。
耳ダニと確定したら、スポットタイプの駆除剤などを使って駆除と治療を行います。
犬のノミ・マダニ予防法|予防薬の種類と選び方

犬のノミ・マダニ対策でいちばん効果的なのは予防薬です。 ここでは予防薬の種類と選び方のポイントについてお伝えします。
スポットタイプ
首の後ろに滴下するタイプです。効果はおよそ1か月で、毎月使うことで効果を持続させます。
また、水に濡れると効果が落ちる製品が多いため、投与後の数日間はシャンプーや水遊びを控えるのが基本ですが、控える日数も製品ごとに差があります。詳細は必ず使用説明書を確認するか、獣医師の指示に従いましょう。
フィラリア対策もできるオールインワンタイプ
ノミ・マダニだけでなく、フィラリア予防や虫下しの効果をもつ予防薬です。多くは食べやすいチュアブル(飲み薬)タイプで提供されており、ノミ・マダニに加えてフィラリアなどの寄生虫対策が一度で済むので、最近の主流になっています。
注射タイプ
直接体に注入するタイプの予防薬です。比較的新しいタイプの予防法で、1回の注射でおよそ1年間の予防効果が続く製品です。毎月与える必要がないので、管理しやすい点がメリットです。
ノミ・マダニの予防薬はいつまで効果が続く?
一般的な予防薬は、1か月ごとの投与が基本です。使用する予防薬によって効果の持続期間は異なるので、必ず獣医師に確認しましょう。
ノミ・マダニ予防薬はいつから使える? すぐ必要ならスプレータイプも
一般的な予防薬は、生後8週から使えるものが多いです。それまでノミやマダニの多い野外での活動は避けましょう。
できるだけ早く予防が必要な場合、スプレータイプ(噴霧タイプ)の駆除剤を使う方法もあります。製品によっては生後2日から使用でき、体重制限もありません。
犬をノミ・マダニから守る毎日のケア

万が一ノミやマダニがついてしまった場合も、日常的なケアを習慣にしておくと早期に対策できます。
散歩後にボディチェックをする
散歩やアウトドアを楽しんだあとは、家に入る前に愛犬の体をチェックしましょう。
ノミ・マダニが隠れやすい耳の裏、吸血しやすい脇や内股はとくに要注意です。足の指の間や肉球付近にも意外とついていることがあるので、やさしく触れて確認してあげましょう。
散歩の服装は長袖で
飼い主さんの露出した肌にノミやマダニがつくこともあるので、散歩時は長袖やアームカバーでガードしましょう。ノミやマダニの付着に気づきやすい明るい色のものがオススメです。
室内をこまめに掃除する
ノミやマダニは室内で増殖するので、日頃からこまめに掃除を行いましょう。
愛犬がよく寝そべっている場所は重点的に掃除します。ソファや布団はノミ・マダニの大好きな場所です。カバーなどのファブリック類は、乾燥機OKの素材を選ぶとよいでしょう。
ノミ・マダニ対策はプロに頼ろう|動物病院とトリミングサロン

はじめて犬を飼うという方は、動物病院やトリミングサロンと一緒にノミ・マダニ予防をすると安心です。
動物病院は予防と駆除のプロフェッショナル
ノミ・マダニ予防でもっとも重要なのは予防薬です。動物病院では、愛犬の体質に合った予防薬を処方してくれます。
万が一ノミやマダニがついたときも、動物病院ですぐに駆除をすれば被害を最小限に抑えることができます。ノミ・マダニのトラブルはまっさきに動物病院へ相談しましょう。
トリミングサロンでノミ・マダニがつきにくい被毛に
毛玉や抜け毛が絡まった犬の被毛は、ノミやマダニにとって絶好の棲み処です。
湿気が多くあたたかいので、産卵したり身を潜めたりするのにちょうどよい条件がそろっているのです。
トリミングサロンでカットやシャンプーを行うと、地肌がすっきりして湿気がこもりにくくなり、ノミやマダニの予防になります。プロ目線の対策ポイントを教えてもらうこともできるので、定期的なサロンの利用がオススメです。
ノミ・マダニがついたままトリミングサロンを利用するのはNG!
トリミングサロンには、ノミ・マダニがついたままの子を預けることはできません。サロンを利用するほかの子たちに寄生するおそれがあるからです。
ノミ・マダニを疑う症状があるときは、動物病院を受診しましょう。
よくある質問|ノミ・マダニ対策のFAQ

ここでは、ノミ・マダニのよくある質問についてお答えします。
Q1. 市販のノミ・マダニ予防薬でも大丈夫?
市販の予防薬はオススメしません。
動物病院で処方される予防薬に比べて、十分な効果が検証されていない製品もあり、期待した効果を発揮できないリスクがあります。
Q2. 冬場でもノミ・マダニ予防薬は必要?
必要です。ノミは冬になると活動が低下しますが、室内で生き残る個体もいます。
また、マダニは秋~冬にかけて幼体が活発になる場合もあります。
Q3. 室内飼いでも予防はすべき?
予防をオススメします。
飼い主さんの衣類などを介してノミ・マダニが家庭内に持ち込まれ、愛犬が寄生することがあります。
Q4. マダニを見つけた場合、自分で取ってもいい?
マダニを自分で取るのは避けましょう。
無理にひきはがすと二次感染のリスクが高まります。そのまま動物病院を受診してください。
Q5. ノミ・マダニの予防薬を投与し忘れた場合は?
気づいた時点で投与してください。数日の遅れであれば、問題ないことがほとんどです。
1か月以上投与を忘れてしまった場合は、かかりつけの獣医師に指示を仰ぎましょう。
犬のノミ・マダニ対策は「飲み薬などの予防」が一番大切
ノミ・マダニ対策は、何よりも予防が一番大切です。飲み薬やスポットタイプの予防薬に加えて、散歩後のボディチェックや室内の掃除といった日常のケアも欠かせません。
治療を始めるタイミングが早いほど、貧血やSFTS、バベシア症といった二次感染を防げる可能性が高まります。かゆみなどの症状に気づいたら、迷わず動物病院を受診するようにしましょう。
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