愛犬の目の下にできた茶色い「涙やけ」に悩んでいませんか?
涙やけは単なる汚れではなく、涙の分泌や排出のバランスが崩れているサインです。原因は犬種による体質的なものから、生活環境、フード、ストレス、目の病気まで多岐にわたります。
本記事では、涙やけが起こる原因をはじめ、今日から始められるケア方法や受診すべき症状まで詳しく解説します。原因に合わせたケアで愛犬の目元を健やかに保ちましょう。

この記事の監修者:松本千聖先生
岐阜大学応用生物科学部獣医学課程を卒業後、3年ほど獣医師として動物愛護団体付属動物病院やペットショップ付属動物病院にて主に一次診療業務、ペット保険会社での保険金査定業務などに従事。
現在は製薬関係の業務に携わりつつ、ペットの健康相談業務、動物関係のライティングに加えてペット用品並びに犬猫の健康記事に関する監修経験多数。なおプライベートでは個人で保護猫活動並びに保護猫達の健康管理実施中。
犬の涙やけとは?

涙やけとは、涙によって目元の毛が茶色くなった状態をいいます。
涙やけそのものは病気ではありませんが、美容的な問題として気にする飼い主さんも少なくありません。 では、なぜ犬は透明な涙で毛が茶色くなってしまうのでしょうか?
茶色くなるのはなぜ?涙やけが起こるメカニズム
涙やけは、次のような仕組みで起こります。
②目の下の毛に涙が付着する
③涙の成分が反応を起こし、茶色に変色する
犬の涙には、ポルフィリンという成分が含まれています。
ポルフィリンは古くなった赤血球の代謝物質で、わずかに鉄分を含みます。ポルフィリンが長期間空気にさらされると鉄分が酸化してしまい、茶色い涙やけになるのです。
涙やけを放置するとどうなる?
涙やけを放置しても、それ自体が悪化して病気になるわけではありません。
しかし、涙で毛や皮膚が濡れていると雑菌が繁殖しやすく、ときには炎症を起こすこともあります。
犬の涙やけの原因

犬が涙やけを起こす理由として、大きく5つの原因があります。
涙の排出がうまくいかない
目にたまった涙は、まぶたにある小さな穴(涙点)から吸収されて涙小管を通り、涙を一時的にためておく涙嚢へ入ったあと、鼻涙管を通って鼻へと流れていきます。
これらの器官のどこかが炎症や詰まりを起こすと、涙をうまく排出することができません。
涙やけのよくある原因は鼻涙管閉塞(びるいかんへいそく)と涙嚢炎(るいのうえん)です。
鼻涙管閉塞は、粘液の詰まりや鼻涙管が生まれつき狭いことで起こります。
涙嚢炎は、菌の繁殖や埃などの異物による炎症です。お散歩コースの草むらで、ノギ(イネ科の植物にあるトゲ状の突起)に触れて起こることもあります。
涙の分泌量が多い
角膜炎や結膜炎などで目が炎症を起こしていると、涙が過剰に分泌されます。
ほかに、目の周りの被毛が眼球に触れたり、まぶたが目の内側に入り込む眼瞼内反症(がんけんないはんしょう)があったりする場合にも、目が刺激されて涙の分泌が増えてしまいます。
犬種や体質など生まれつきのもの
鼻涙管がもともと狭い、または涙の入口となる涙点が欠損しているといったように、生まれつき涙が排出されにくい子もいます。こうした子はこまめに涙やけのケアを行う必要があります。
トイプードルやパグといった犬種も、先天的に涙やけを起こしやすい体質の子が多いです。犬種については詳しく後述します。
生活環境(アレルゲンなど)
花粉やハウスダストが原因となって目が潤みがちになり、涙やけにつながることがあります。とくにアレルギー体質の子は、部屋の掃除やお散歩ルートに気をつけてあげることも必要です。
フードや食べ物の影響
小麦・とうもろこしなどの穀類(グレイン)、チキン・牛肉などの食物アレルギーがあると、体が反応して涙が過剰に分泌されることがあります。
また、食品添加物が多く含まれるフードは、涙としてうまく排出できずに涙の量が増え、涙やけにつながることがあります。 ただし涙やけは食べ物以外の原因で起こることの方が多いので、さまざまな方向から考えることが大切です。
涙やけが起こりやすい犬種や特徴は?

涙やけは、犬種や年齢によって起こりやすさが異なります。ここでは、涙やけに注意したい犬の種類や特徴についてお伝えします。
短頭種
シーズー・パグ・フレンチブルドッグなどの短頭種は、鼻が短く目が大きいため、涙があふれやすい構造になっています。鼻涙管がもともと狭い子が多いのもこれらの犬種の特徴です。 また、鼻のひだにある毛が眼球に触れて涙が増えてしまうケースもよくあります。
小型犬
トイプードル・マルチーズ・チワワといった小型の犬種は、体が小さいために鼻涙管も狭い傾向にあります。加えて小型犬は、目がくりっとして突出している子が多いです。こうした目は涙がうまく吸収されにくく、涙やけを起こす可能性が高くなります。
アレルギーを起こしやすい犬種
柴犬・アメリカンコッカースパニエル・ミニチュアダックスフンドはアレルギー体質の子が多く、目のかゆみや炎症から涙やけを起こすことがあります。アレルゲンは花粉やハウスダスト、ノミやダニ、食品、カビ(真菌)、薬剤などさまざまです。
パピーやシニア犬
パピーは涙腺が未発達なので、涙があふれやすい子が多いです。
成長とともに自然と落ち着いてくることが多いですが、パピーのうちはこまめにケアしてあげましょう。
シニア犬は涙の質が変化したり、マイボーム腺が詰まったりすることで、涙やけを起こしやすくなります。ドライアイもシニア犬にはよく見られ、角膜が乾燥して傷つくことで涙やけを起こすケースもあります。
毛色が明るい犬
白やクリーム色などのやさしい毛色をした子は、どうしても茶色い筋が目立ってしまいます。涙やけで染まった毛が元の色に戻ることはなく、ケアをしても新しい毛に生え変わるまで1~2か月ほどかかるでしょう。
反対に、黒や茶色など濃い毛色をした子は涙やけしてもほとんど分かりません。目立たないのでつい放置しがちですが、湿った毛が原因で雑菌が繁殖してしまうこともあるので、ときどき目元のケアをしてあげましょう。
涙やけを防ぐには?

ここからは、涙やけを軽減・予防する具体的なケア方法についてご紹介します。
自宅でできる涙やけケア
基本のケアは、毎日の拭き取りです。
涙が変色する前に目元をきれいにしておくと、涙やけを抑えることができます。
ぬるま湯で清潔なコットンまたはガーゼを濡らし、固く絞ってやさしく目元を拭き取りましょう。このとき、上まぶた1回・下まぶた1回というように分けて行うのがポイントです。上下のまぶたを一気に拭くと、眼球を傷つけてしまうことがあります。
拭いたあとに湿ったままだと雑菌が繁殖するので、乾いた柔らかい布でもう一度拭いてあげてください。1日2~3回ほど時間を分けて行うと、より効果的です。
ぬるま湯で改善しない場合は、犬の涙やけ専用のクリーナーを使うという方法もあります。コットンに染み込ませて使うローションタイプ、外出先でも便利な使い切りのシートタイプなどがあるので、シーンに合わせて選んでみましょう。
フードや生活習慣を見直してみる
フードによるアレルギーが疑われる場合は、今までとは違う動物たんぱく質のフードに切り替えるのもひとつの方法です。ただし新しいフードが愛犬に合わない可能性もあるので、必ず少量から試してください。
消化不良や腸内環境の乱れがあると、涙やけが改善しにくい場合があります。
腸内環境を整えるためには、穀類の含有量が控えめで、人工着色料や香料などの添加物が少ないものを選ぶようにしましょう。腸内細菌をサポートする乳酸菌を含むフードもオススメです。
また、埃やハウスダストは目の刺激となるので、こまめに掃除や換気をしてお部屋の清潔を保ちましょう。適度に加湿して目の乾燥を防ぐことも、涙やけの予防になります。
見落としがちな毛にも注意
涙やけを予防するには、目元や顔周りの毛を整えておくことも大切です。
拭き取りで毎日目元をきれいにしていても、毛が伸びっぱなしになっていると目を刺激してしまい、涙が増える原因になります。
とくに長毛の子は絡まって毛玉になりやすく、そこに涙が流れて湿ったままの状態が続くと菌の温床になります。菌が目に入って角膜炎など目の炎症を起こし、さらに涙やけが悪化するという悪循環に陥ると、治療はいっそう難しくなります。
涙やけのケアはトリミングサロンへ

トリミングサロンを適切に利用すると、涙やけを効果的に改善・予防しやすくなります。
目の周りの毛をプロが安全にカット
顔周りの毛のカットは嫌がる子がとても多く、自宅で行うとワンちゃんが動いて目を傷つけてしまうリスクがあります。目の周囲はデリケートな部分なので、サロンで安全に整えてもらうのがオススメです。
カットだけではなく、涙がたまりにくいように毛流れを整え、固まった汚れをやさしく取り除いてくれるのもトリミングサロンを利用するメリットです。
涙やけ専用のメニューがあるサロンも
トリミングサロンによっては、オゾン温水浴や専用ローション洗浄といった涙やけケアメニューを受けられます。
涙やけケアメニューはオプションとして用意されていることが多いですが、月〇回までなど上限を設けたうえで利用し放題になるサブスクリプションプランを採用しているサロンも増えています。
自己流ケアだけじゃ足りない?プロを頼るメリット
サロンのトリマーは毎日数多くの子を見ているので、愛犬の目・皮膚の状態や毛流れのクセなど、飼い主さんだけでは気づきにくい部分をチェックしてくれます。
病院ではないので診察まではできませんが、行きつけのトリミングサロンが近所にあると、愛犬をケアするパートナーとして心強いでしょう。
こんな症状が出たら動物病院へ

涙やけに気づいても「この程度で病院に行ってもいいの?」と悩む飼い主さんもいらっしゃるでしょう。ここでは受診すべき涙やけの症状について解説します。
涙やけで注意したい症状をチェック
以下の症状があるときは、炎症を起こしている可能性があります。できるだけ早く動物病院を受診しましょう。
・いつも涙で潤んでいる
・黄色い目やにがよく出ている
・まぶしそうにしていることが多い
・ぱちぱちとまばたきを繰り返している
・目の下に脱毛や皮膚の赤みがある
・目の周りを気にしてかゆがる
・目を開けにくそうにしている
上記のような症状や涙やけが続くときは、一度受診をすると安心です。
涙が正常に流れていれば、通常涙やけを起こすことはありません。
涙やけがあるということは涙の分泌が多い、または涙が排出されにくい状態なので、病院で目のトラブルを併発していないか確認することが大切です。
涙やけと間違いやすい目の病気
「涙やけの原因」で述べたように、涙やけには鼻涙管閉塞、眼瞼内反症、角膜炎・結膜炎など目の病気が隠れていることがあります。
ほかにも、ドライアイの初期は一時的に涙が増えて涙やけを起こしやすくなります。
特に注意したいのは緑内障です。眼圧が異常に高くなる緑内障は痛みが強く、反射的に涙の分泌が増えます。進行すると失明することもあるので、目がいつもより張っているときは要注意です。
涙やけの原因に合わせたケアで対策を
涙やけは、涙の分泌過多や排出がうまくいかないことで起こります。その背景には、犬種や体質による生まれつきのもの、生活環境、フードなど、さまざまな原因があります。何が涙やけの原因になっているかを正しく見極めることが一番の涙やけ対策になります。 トリミングサロンでのカットやケアは涙やけ対策として効果的です。目の赤みやかゆみなど、気になる症状があるときは動物病院を受診しましょう。
コメント