犬にフケが出るのはなぜ? 原因と対策を解説【獣医師監修】

愛犬の被毛に白い粉のようなフケを見つけたら、「もしかして病気かも?」と心配になる飼い主さんも多いのではないでしょうか。特に毛色の濃いワンちゃんだと、フケが目立ちやすくて気になりますよね。
犬のフケは、健康な状態でも自然に発生します。少量であれば問題ありませんが、大量に出ている場合や、かゆみや脱毛などの症状を伴う場合は、何らかのトラブルのサインかもしれません。
本記事では、犬のフケが発生する原因から対処法まで、獣医師監修のもと詳しく解説します。愛犬の皮膚トラブルでお悩みの飼い主さんは、ぜひ参考にしてください。

この記事の監修者:片山政都先生

日本獣医生命科学大学を卒業後、地元茨城県つくば市の動物病院に勤務。
その後川崎の保護猫を専門とする動物病院に1年ほど勤務し、2019年1月にブルーム動物病院を開業。
FIPや呼吸器、猫の歯肉口内炎やFIV/FeLV、腫瘍等を主な専門として、ペットへの愛を持って日々治療に向き合っている。

犬のフケとは?

フケとは、皮膚の表面から剥がれ落ちた古い角質細胞のことです。人間と同様に、犬の皮膚も常に新しい細胞が生まれ、古い細胞が剥がれ落ちるサイクル(ターンオーバー)を繰り返しています。
これは外部の刺激や乾燥から体を守る皮膚バリア機能を正常に保つための仕組みであり、健康なワンちゃんであればターンオーバーの周期は約3週間といわれています。
通常、剥がれ落ちる角質細胞は非常に小さく、肉眼では気付かない程度です。
しかし、乾燥やアレルギーなどで皮膚バリア機能が損なわれると、体は急いで修復しようと細胞の生産ペースを上げます。この早すぎるサイクルでは細胞が十分に成熟できず、未熟なまま剥がれ落ち、それらが皮脂と絡み合って目に見える大きなフケとなるのです。
つまり、フケ自体は自然な現象ですが、量やサイズが増している場合は、皮膚のターンオーバーが異常に早まっているサインの可能性があります。

フケの原因には「生活環境」と「病気」がある

犬のフケは、大きく「生活環境」と「病気」が原因で起こります。特に、以下のような症状を伴う場合は、皮膚トラブルのサインかもしれません。

・皮膚の塊のような大きなフケ
・ベタっとした脂っぽいフケ
・激しいかゆみや脱毛などの追加症状

上記に加え、フケの量が明らかに増えたと感じたときは、早めに動物病院を受診することをオススメします。

なお、特定の原因がなくても、もともとフケが出やすい体質の犬種もいる ので、先天性のものなのか、皮膚トラブルなのか判断が難しい場合は、獣医師の判断を仰ぎましょう。

生活環境にまつわるフケの原因

日常生活の中にも、犬のフケを引き起こす要因は潜んでいます。ここでは、生活環境にまつわる主な原因について解説します。

乾燥

乾燥は、フケの一般的な原因の一つです。 犬の皮膚は人間よりも薄いため、水分が蒸散しやすい傾向にあります。
特に、冬場の暖房や夏場の冷房が効いた室内は空気が乾燥しやすく、皮膚のバリア機能が低下することでターンオーバーが乱れて、フケが発生しやすくなるのです。

誤ったお手入れ

シャンプーの方法が適切でないことが原因で、フケが増える場合もあります。
例えば、シャンプーの頻度が多すぎたり、洗浄力の強いシャンプー剤を使ったりすると、本来必要な皮脂まで奪ってしまい乾燥につながります。また、泡のすすぎ残しは炎症やかゆみ、フケの原因となる可能性があるため注意が必要です。
特に、ワンちゃんを洗う際に人間用のシャンプー剤を使用するのは避けましょう。
健康的な人間の皮膚が弱酸性(pH4.5~6.0前後)であるのに対し、犬の皮膚は中性〜弱アルカリ性(pH6.5〜7.5前後) と異なる体質を持っています。そのため、人間用のシャンプー剤を使うと、皮膚のpHバランスを崩してしまう恐れがあるのです。
この機会に愛犬の肌に合うシャンプー剤を探す、お風呂の頻度を見直すなど、日々のお手入れ方法を振り返ってみると良いでしょう。

ストレス

ストレスによる自律神経の乱れや免疫力低下が皮膚トラブルに発展することもあります。その結果、フケが増えたり、皮膚炎が悪化したりする可能性も。
飼い主が気づきにくいストレスが原因の場合もあるため、何か思い当たることがないか、愛犬の様子をよく観察してみましょう。
例えば、家族構成の変化(新しいペットや赤ちゃんの迎え入れ)や長時間の留守番、騒音などが、ワンちゃんにとって大きなストレスとなっているかもしれません。

栄養バランスの乱れ

栄養バランスの乱れがフケの原因となっている可能性もあります。愛犬の健康な皮膚と被毛を保つには、食生活も大事なポイントです。特に重要な栄養素として、タンパク質、必須脂肪酸、亜鉛、ビタミンなどが挙げられます。
栄養の偏りは、皮膚のコンディションに大きな影響を与え、フケが増える原因にもなるということを意識しましょう。

生活習慣にまつわるフケへの対処法

ここからは生活習慣が原因でフケが出ている場合の対処法を解説します。毎日のちょっとした工夫やケアがフケの予防につながることもありますので、ぜひ参考にしてみてください。

生活環境を見直す

フケの主な原因の一つである皮膚の乾燥を防ぐためには、まず室内環境を見直しましょう。
ワンちゃんが快適に過ごせる温度と湿度を理解しておくことが大切です。特に空調を使う時期は空気が乾燥しやすいので、加湿器を利用して湿度を40~60% に保つのが理想的(犬種によって多少の違いはあり)。
また、ベッドを暖房器具やエアコンの風が直接当たる場所に置かないようにすることも有効です。室温は25~27度程度に保てると良いでしょう。

低刺激シャンプーや保湿剤を使用する

フケの原因として、シャンプー剤がワンちゃんの肌に合っていない可能性が考えられるときは、犬用の低刺激なものに変更するのが◎。
保湿や皮脂洗浄、抗菌など、それぞれに特化したシャンプー剤があるため、愛犬の肌質に合ったものを選ぶのがポイントです。
例えば、乾燥が気になる場合は、セラミドやヒアルロン酸などが配合された保湿効果の高いタイプがオススメ。 洗い残しのないよう十分にすすぎ、シャンプー後は犬用の保湿剤で皮膚の潤いを保つと良いでしょう。
また、犬種や年齢によっても異なりますが、シャンプーの頻度は月に1~2回程度が目安です。自宅で全身を洗うのは意外と難しいため、不安な場合はトリミングサロンや動物病院を頼ることも検討してみましょう。

ストレスを軽減させる方法を考える

ストレスが原因と思われる場合は、その要因を取り除く工夫が必要です。いつからフケが目立ちはじめたか思い返してみましょう。
留守番の時間が長い、スキンシップが減ったなどが考えられるなら、愛犬と過ごす時間を増やしたり、おもちゃを与えたりして、ワンちゃんが退屈する時間を減らしてみてください。
物音に敏感な様子が見られるなら、ハウスの場所を変えるなど、安心してくつろげる隠れ家のようなスペースを用意してあげるのも効果的です。環境を整えることが、ストレスの軽減につながるでしょう。

栄養バランスを意識する

フケが気になるときは、日々の食事内容を見直すのも一つの手。特に、以下の栄養素はワンちゃんの皮膚のコンディションを整えるうえで役立つといわれています。

・タンパク質:皮膚や被毛の主成分
・不飽和脂肪酸(オメガ3・6系):皮膚の水分保持や抗炎症作用が期待できる
・ミネラル(銅・亜鉛):皮膚や被毛の免疫力を高める効果が期待できる
・ビタミンA:皮膚の新陳代謝を促進する効果が期待できる
・ビタミンB群:被毛の質を改善し、フケの減少 効果が期待できる

愛犬のライフステージや体質に合った食事を基本としつつ、必要に応じて獣医師に相談し、サプリメントで栄養を補うのも良いでしょう。

大量のフケやプラスαの症状を引き起こす病気とは?

健康なワンちゃんでもフケは出ますが、量が急に増えたり、赤みやかゆみ、脱毛などを伴ったりする場合は病気のサインかもしれません。
ここからはフケを引き起こす可能性のある主な病気について解説します。
ただし、これらの病気は症状が似ている場合もあるので、自己判断は避けましょう。正確な診断と治療のためにも、必ず動物病院を受診してくださいね。

感染性皮膚炎

感染性皮膚炎とは、寄生虫、真菌(カビ)、細菌などが皮膚に感染して起こる皮膚炎です。皮膚に炎症が起き、バリア機能が低下することでターンオーバーが乱れ、フケの原因となります。

寄生虫による皮膚炎

ツメダニ症 :イヌツメダニという小さなダニの寄生が原因で起こる皮膚炎です。背中を中心に大量のフケとかゆみが見られます。「歩くフケ」とも呼ばれ、人に感染することもあるため注意が必要です。

皮膚疥癬症(ひふかいせんしょう) :ヒゼンダニというダニを原因とする、感染力の強い皮膚炎。激しいかゆみを伴い、フケのほか、赤みや化膿が見られることもあります。人に感染する可能性があるので、早めの治療が肝心です。

毛包虫症(もうほうちゅうしょう) : ニキビダニの過剰な増殖が原因で起こる皮膚炎。もともと皮膚に常在するダニではあるものの、免疫力が低下した際などに大量発生し、フケや脱毛を引き起こすのが特徴です。パピーやシニア犬で発症しやすい傾向があります。

真菌(カビ)による皮膚炎

皮膚糸状菌症 :糸状菌というカビが原因で発症し、円形の脱毛とフケが見られるのが特徴です。人に感染するタイプもあるため、飼い主の手洗いやこまめな消毒も求められます。

マラセチア皮膚炎 :マラセチアという常在菌の異常繁殖が原因。脂っぽいベタついたフケ、強いかゆみ、独特の発酵臭が特徴です。皮脂の多い犬種や、アレルギーなどで皮膚のバリア機能が低下していると発症しやすくなります。

細菌による皮膚炎

主にブドウ球菌の感染による膿皮症が挙げられます。フケのほか、赤い発疹、化膿、かさぶた、かゆみ、脱毛などが主な症状です。アレルギーや免疫力低下が引き金となり、発症することがあります。

アレルギー性皮膚炎

食べ物、ハウスダスト、花粉といった特定のアレルゲンへの過剰な免疫反応で生じる皮膚炎です。強いかゆみから皮膚をかきむしり、その結果としてフケが出ることがあります。
原因となるアレルゲンの特定と除去が治療の基本となるため、動物病院で獣医師の判断を仰ぎましょう。

アトピー性皮膚炎

アレルギー性皮膚炎の一種で、遺伝的素因が強いとされています。ハウスダストや花粉など、環境中のアレルゲンに反応して発症することが多いでしょう。乾燥や刺激に弱く、フケを伴う皮膚炎を繰り返しやすいのが特徴です。

脂漏症

脂漏症とは、皮脂の分泌や皮膚のターンオーバーが異常になる病気で、以下の2パターンに分けられます。

乾性脂漏:パラパラとした乾燥したフケが大量に出る
油性脂漏:脂っぽくベタついたフケが多く、特有の臭いを伴う

これらは、遺伝が原因の「原発性」と、ほかの病気などに伴って起こる「続発性」があり、原発性はシー・ズーやアメリカン・コッカー・スパニエルなどに多いといわれています。

甲状腺機能低下症

甲状腺機能低下症は、甲状腺ホルモンの分泌が減ることで、全身の代謝が低下する病気です。
シニア犬に多い疾患で、乾燥によるフケや脱毛、毛ヅヤの低下などの皮膚症状に加え、「元気がない」「疲れやすい」「寒がる」といった全身症状が現れます。

病気によるフケへの対処法

愛犬のフケで気になる症状があるときは、動物病院で診察を受けるようにしましょう。また、生活習慣が原因なのか、病気によるものなのかを見分けるのは難しいので、自己判断せずに獣医師の判断を仰ぐのがベター。
受診の際は、以下の項目をまとめておくとスムーズです。

・いつからフケが気になりだしたか
・かゆみの有無(かゆそうにしている頻度)
・基本的な食事内容
・使用しているシャンプー
・普段のスキンケア(保湿剤の種類など)

獣医師は、これらの情報をもとに視診や触診を行います。必要に応じて、ダニや細菌・真菌がいないかを顕微鏡で確認することもあり、どこをかゆがっているかは検査において重要な手がかりとなるため、できる限り症状を詳しく伝えましょう。
治療法は原因によってさまざまで、アレルギーやアトピーなど症状次第では継続的なケアが必要なものもあります。 個々のワンちゃんに合わせたアプローチが求められるため、まず動物病院で診断を受け、適切な治療を受けることが大切です。
放置すると炎症が悪化したり、二次感染を引き起こしたりする可能性があるので、早めの対処を心がけましょう。
また、病気の予防や早期発見のためには、日頃から皮膚の様子をこまめにチェックすることも重要です。特に、トリミングサロンや動物病院での定期的なお手入れは、皮膚や被毛の状態をプロの目で確認してもらえる良い機会。自宅でのケアに加えて、こうした場も上手に活用していきましょう。

愛犬のフケが気になったら適切に対処しよう

犬のフケは、少量であれば生理現象の一環です。しかし、量が多い場合やその他の症状を伴う場合は、何らかのトラブルのサインかもしれません。
気になる場合はまず獣医師に相談し、その原因を特定することが大切。そのうえで、生活環境の改善や適切なスキンケア、栄養バランスの見直しなど家庭でできる対策も実践しましょう。
また、皮膚トラブルの予防や早期発見という観点から、定期的にトリミングサロンや動物病院などでプロの手を借りてお手入れするのもオススメです。愛犬の健康な皮膚と美しい被毛を保つためにも、日々の観察とケアを心がけてくださいね。

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