「掃除したばかりなのにもう毛が落ちている…」 柴犬と暮らす飼い主さんにとって、換毛期を中心に繰り返される抜け毛は大きな悩みの種。
すさまじい毛量は柴犬が「ダブルコート」という被毛の持ち主だからですが、まれに抜け毛の裏に皮膚の病気などが隠れていることもあるので注意が必要です。
本記事では、柴犬の抜け毛の原因や病気との見分け方、毎日のケアを楽にする方法を獣医師監修のもと解説します。「抜け毛が大変!」という飼い主さんはぜひチェックしてください。

この記事の監修者:松本千聖先生
岐阜大学応用生物科学部獣医学課程を卒業後、3年ほど獣医師として動物愛護団体付属動物病院やペットショップ付属動物病院にて主に一次診療業務、ペット保険会社での保険金査定業務などに従事。
現在は製薬関係の業務に携わりつつ、ペットの健康相談業務、動物関係のライティングに加えてペット用品並びに犬猫の健康記事に関する監修経験多数。なおプライベートでは個人で保護猫活動並びに保護猫達の健康管理実施中。
柴犬の抜け毛は「ダブルコート」と「換毛期」が原因

「毛が短い犬=抜け毛が少ない」と思われがちですが、実は柴犬は非常に抜け毛が多い犬種です。 その理由は、被毛の構造と生え変わりにあります。 ここでは、柴犬がもつ「ダブルコート」の仕組みと、年2回訪れる「換毛期」について詳しく説明します。
柴犬のアンダーコートは寒さに耐える防寒着
犬の被毛構造は「シングルコート」と「ダブルコート」の大きくふたつに分けることができます。
シングルコートは重ね着をしていない一重構造のタイプ、ダブルコートは役割の違う2種類の毛を持つ二重構造のタイプです。
柴犬が持つダブルコートは、その名の通り二重構造になっています。
表面の硬い毛は「オーバーコート」と呼ばれ、雨や降り注ぐ紫外線から肌を守る役割を果たしています。一方、内側のやわらかい毛は「アンダーコート」と呼ばれ、ダウンジャケットのように体温を保つのに役立っています。
年2回の「換毛期」はさらに抜ける
気温が上がってくると分厚いアンダーコートが不要になるので、春に毛が抜け落ちてすっきりした夏毛へと生え変わります。逆に、暑い夏が終わって涼しくなってくると、今度は冬に備えてふかふかのアンダーコートが生えそろいます。
柴犬は一年中抜け毛が多いのですが、この年2回の衣替え時期はとくに大量の抜け毛が発生します。
柴犬の換毛期はいつからいつまで?
換毛期の目安は、一般的には以下のとおりです。
・秋の換毛期 9~11月(初秋から冬のはじめ)
上に示したものはあくまで目安です。換毛期は居住地域や体質などの影響を受けるため、個体差があります。
その抜け毛、大丈夫?換毛期と病気の違い

たくさん毛が抜けると「この量って正常なの?」「病気なのでは?」と心配になる飼い主さんも多いはず。ここでは正常な抜け毛と異常な脱毛を見分けるポイントについて見ていきます。
「正常な抜け毛」と「異常な脱毛」の見分け方ポイント
病気による脱毛の場合、以下のような症状をともなうことがあります。
・しきりに体を舐めたり、掻きむしったりしている
・左右対称に毛が薄くなっている
・毛のツヤがなくなり、パサパサしている
・最近急に太った、またはやせてきた
・赤み、かさぶた、ベタつき、ニオイ、フケなどがある
・多飲多尿が見られるようになった
正常な換毛期であれば、どれだけ毛が抜けても「地肌はきれいなまま」で、「強いかゆみは伴わない」のが普通です。 ブラッシングの際に上記のような異常をひとつでも見つけたら、様子を見ずに早めにかかりつけの獣医師に相談しましょう。
柴犬がかかりやすい「脱毛をともなう病気」
抜け毛の症状がみられる病気のうち、とくに柴犬がかかりやすいのは次のような病気です。
アトピー性皮膚炎・アレルギー
人間だけではなく犬も、アトピーやアレルギーによる皮膚症状を起こすことがあります。とくに柴犬は「犬アトピー性皮膚炎」にかかりやすい犬種です。ほかの犬種と比べて皮膚のバリア機能が弱く、アレルゲンが侵入しやすい体質だからといわれています。
犬アトピー性皮膚炎は、ダニ・ハウスダスト・花粉・カビなどといったアレルゲンによって引き起こされます。強いかゆみをともなうのが特徴で、脱毛や赤みのほかに、「足先を執拗に舐める」「顔を床にこすりつける」「体を後ろ足で掻く」といったしぐさがよく見られます。また、環境だけでなく食品のタンパク質に反応してアレルギーを起こすこともあります。
アトピーやアレルギーは、生後半年〜3歳くらいの若年齢で発症することが多いです。かゆがったり肌が赤くなったりしている脱毛には注意しましょう。診断された場合は、アレルゲンを避ける生活指導や、薬物による治療を継続して行います。
膿皮症(のうひしょう)
膿皮症はブドウ球菌などの細菌が大量に繁殖して起こる病気で、次のような症状がみられます。
・脱毛
・かさぶた
・ニキビのような白い膿
・輪っか状の発赤
ブドウ球菌は健康な犬の皮膚にもいる常在菌ですが、通常は悪さをしません。しかし、アレルギーなどによる「かゆみ」で皮膚を傷つけてしまったり、湿気や汚れで皮膚環境が悪化したりしてバリア機能が弱まると、一気に繁殖して炎症を起こします。
ホルモン系の異常
甲状腺や副腎皮質の異常でも毛が抜けることがあります。アレルギーや感染症と違い、多くの場合はかゆみをともなわないのが大きな特徴です。
たとえば甲状腺の機能が低下している場合は、なんとなく元気がない、体重が急に増える、しっぽの毛が抜ける「ラットテイル」や、左右対称の脱毛、皮膚の黒ずみやフケといった症状がみられます。4~10歳くらいの犬に多いとされています。
副腎皮質が活発になりすぎる「クッシング症候群」も、左右対称の脱毛が起こります。皮膚が薄くなって血管が透けたり、お腹がぽっこり膨れたり、多飲多尿が見られるのが特徴です。5歳から7歳の中高齢犬に多く、初期症状の間は見過ごされてしまうことがあります。
ストレスによる脱毛
犬は強いストレスや退屈を感じると、自分の手足や体を舐めたり噛んだりする習性があり、同じ場所を執拗に舐め続けることで、そこだけ毛がちぎれてハゲてしまうことがあります。
柴犬はかつては番犬として飼われることが多かったため、我慢強い性格と思われがちです。しかし意外とデリケートな一面があり、引っ越しや家族構成の変化、運動不足などでストレスを抱えてしまうことがあります。
柴犬がこまめにストレスを発散できるよう、リラックスできる環境と十分な運動、コミュニケーションを心がけましょう。
ごっそり取れる!柴犬の抜け毛対策【ブラッシング・ケア編】

柴犬の抜け毛を減らすには、こまめにブラッシングを行うのが効果的です。とくに換毛期は毎日ブラッシングをしましょう。毛の生え変わりを促すとともに、部屋に散らばる毛を減らすこともできます。
「スリッカーブラシ」+「コーム」を使う
柴犬のブラッシングに必要なのは、スリッカーブラシとコームです。 通常期は週に2〜3回、換毛期は毎日行うのが理想です。手順は以下のとおりです。
STEP1:スリッカーブラシで抜け毛を浮かす
まずスリッカーブラシを使い、アンダーコート(下毛)の抜け毛を掻き出します。
表面を撫でるのではなく、毛をめくって根元近くにブラシを入れ、サッサッと小刻みに動かして抜け毛を浮かせましょう。
STEP2:コームで抜け毛を取り除く
浮き出た毛をコームですいて取り除きます。 コームが根元までスムーズに通るか確認してください。引っかかる場合はまだ抜け毛が残っている証拠ですので、再度スリッカーブラシでほぐします。
STEP3:仕上げ(獣毛ブラシ)
最後に獣毛ブラシで全体を整えると、被毛に自然なツヤが出るのでオススメです。
愛犬が嫌がらないブラッシングのコツ
ブラッシングは愛犬が落ち着いているときに行いましょう。
散歩から帰ってひと息ついたあと、ゆっくり日向ぼっこをしているときなどに、5~10分程度の短時間で行うのがオススメです。
ブラッシングは愛犬が嫌がりにくい背中などの部位からはじめます。
スリッカーブラシは毛流れと逆にかけると抜け毛がよく取れますが、刺激が強いため嫌がる子も多いです。慣れるまでは毛流れに沿ってかけてあげてください。
スリッカーブラシのハンドルを握り込むと、どうしても力が入りすぎてしまいます。鉛筆を持つように軽く握ると、余計な力が抜け、皮膚を傷つけにくくなります。
おなかなどの皮膚が薄い場所や、ブラッシングデビューのパピーには、肌あたりがやさしいラバーブラシを使うのもよいでしょう。
ブラッシングが終わったあとはご褒美のおやつを与え、たっぷりと褒めて「ブラッシング=いいこと」と覚えてもらうことが大切です。
月1回のシャンプーで抜け毛を洗い流す
抜け毛の多い換毛期は、シャンプーで一気に毛を流すとすっきりします。
ただし、抜け毛が大量に残ったままお湯で濡らすと、毛が固まってフェルト状になり、地肌まで洗えなくなってしまいます。
シャンプー前には必ずブラッシングを行い、ある程度の抜け毛を取り除いておきましょう。
柴犬は比較的肌がデリケートなため、頻度は月に1回が基本、多くても2回までが目安です。洗いすぎは必要な皮脂まで落とし、肌の乾燥や皮膚炎を招く恐れがあります。
低刺激性のシャンプーを使い、地肌をやさしくマッサージするように洗います。泡が残らないよう念入りにすすぎ、仕上げはドライヤーで完全に乾かしてください。
ダブルコートは内側が乾きにくく、生乾きのままだと雑菌が繁殖してニオイや皮膚トラブルの原因になります。
トリミングサロンを利用する
柴犬は自宅ケアだけの場合も多いですが、抜け毛がひどくなる春や秋にサロンを利用するのはとてもよい手段です。プロのシャンプーとブローでアンダーコートをしっかり取り去ると、愛犬の皮膚トラブルの予防としておおいに役立ちます。
柴犬の場合は「シャンプーコース」を選ぶのが一般的ですが、オプションで「レーキング」をお願いするのもオススメです。
レーキングとは、トリミングナイフなどの専用道具で古いアンダーコートを処理するケアのこと。これを済ませておくと、その後の日々のブラッシングや部屋の掃除が格段に楽になります。
また、トリミングサロンでは肛門腺絞りや爪切りもセットで行ってくれます。デリケートな肛門腺や、血管が見えにくく怖い黒爪のケアは、無理せずプロに任せてしまうのが安心です。
部屋を毛だらけにしない!柴犬の抜け毛対策【室内・掃除編】

「換毛期のお掃除が大変!」と嘆いている飼い主さんは多いもの。室内飼いしている愛犬の場合、とくに抜け毛が散らばりやすいです。 最後に、抜け毛の散らばりを減らすための方法やお掃除のポイントをご紹介します。
「抜け毛防止服」を上手に活用する
換毛期にウェアを着せておくと、部屋中に抜け毛が散らばるのを防ぐことができます。ドッグカフェや車での移動時など、マナーとして抜け毛を落としたくない場面で重宝します。
ウェアには薄手のロンパースや長袖タイプなどがありますが、購入の際は伸縮性が高く、通気性のよい素材を選びましょう。表面がサラッとした生地だと、服についた毛が払いやすくお手入れも楽です。
ただし、着せっぱなしは厳禁です。 服の中に溜まった抜け毛が蒸れて「毛玉」になったり、熱がこもって「熱中症」になったりする恐れがあります。あくまで一時的な対策として使い、脱がせたあとは必ずブラッシングをして、通気性を良くしてあげましょう。「服を着るのがはじめて」という愛犬は、ストレスにならないよう短時間から慣らすことも大切です。
掃除機選びと効率的な掃除のポイント
柴犬の綿毛のようなアンダーコートは、カーペットの繊維に入り込んだり、静電気で張り付いたりと意外に厄介です。掃除機は吸引力だけでなく、「ヘッドブラシに毛が絡みにくい構造」のものを選ぶと、メンテナンスのストレスが激減します。
掃除の際は、いきなり掃除機をかけるのはNGです。排気で軽い毛が舞い上がってしまうため、まずはフロアワイパーで床の抜け毛をざっと集めるのが鉄則です。
掃除機でも吸いきれないカーペットやラグの毛には、粘着ローラーが定番ですが、「ゴム手袋」も驚くほど役立ちます。手袋をはめてカーペットの表面をこすると、摩擦力で繊維の奥に入った毛まで面白いように浮き出てきます。ゴム手袋で毛を集めてから掃除機で吸うと、最も効率よくきれいにできます。
空気清浄機で舞う毛をキャッチ
換毛期は毎日掃除をしていても、どうしても室内に細かい毛が舞ってしまいます。 そんな時は、ペット対応の空気清浄機の導入を検討してみましょう。
浮遊する抜け毛やフケ、気になるニオイをしっかりキャッチし、お部屋の空気をクリアに保ってくれます。
選ぶ際は、フィルターのお手入れや交換が簡単なものが便利です。また、動作音を怖がる子もいるため、静音性能に優れたモデルを選ぶと、愛犬もストレスなく過ごせるでしょう。
大量の抜け毛に負けず柴犬の換毛期を乗り切ろう
大量の抜け毛とも上手に付き合い、快適な換毛期を 柴犬の魅力であるふっくらとした被毛を保つためにも、換毛期のケアは欠かせません。
毎日のブラッシングや定期的なシャンプーは、単なる抜け毛対策というだけでなく、愛犬との大切なスキンシップの時間でもあります。体に触れる機会が増えることで、皮膚トラブルや体調の変化にいち早く気づけるというメリットもあります。
とはいえ、春と秋の換毛量は想像以上で、すべてを完璧にこなそうとすると飼い主さんが疲れてしまいます。時にはトリミングサロンや動物病院など、プロの手を積極的に借りましょう。
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