犬のサマーカットとは?メリット・デメリットと被毛タイプ別の注意点を解説【獣医師監修】

夏が近づくと、「愛犬を少しでも涼しくしてあげたい」と考え、サマーカットを検討する飼い主さんは多いのではないでしょうか。
しかし、犬の被毛には体温調節や紫外線・外的刺激から皮膚を守るなどの大切な役割があり、むやみに短くすると、かえって体調不良や皮膚トラブルにつながることもあります。 この記事では、犬のサマーカットとは何かをはじめ、メリット・デメリット、被毛タイプによる注意点や、サマーカットをする際に気をつけたいポイントについて、獣医師監修のもと分かりやすく解説します。

この記事の監修者:松本千聖先生

岐阜大学応用生物科学部獣医学課程を卒業後、3年ほど獣医師として動物愛護団体付属動物病院やペットショップ付属動物病院にて主に一次診療業務、ペット保険会社での保険金査定業務などに従事。
現在は製薬関係の業務に携わりつつ、ペットの健康相談業務、動物関係のライティングに加えてペット用品並びに犬猫の健康記事に関する監修経験多数。なおプライベートでは個人で保護猫活動並びに保護猫達の健康管理実施中。

サマーカットとは?

サマーカットとは、被毛を短めに整え、全体をすっきりと仕上げるカットスタイルの総称です。
明確な定義があるわけではなく、主に夏に行われることが多いことから、このように呼ばれています。 ただし、犬の被毛には体温調節を助けたり、紫外線や外的刺激から皮膚を守ったりする重要な役割があります。
そのため、見た目の涼しさだけで被毛を短くしすぎると、体調不良や皮膚トラブルにつながることもあります。

サマーカットの長さに決まりはある?

サマーカットの被毛の長さに、明確な決まりはありません。
犬の被毛タイプ(シングルコート/ダブルコート)や皮膚の状態、生活環境などによって、適切な長さは異なります。 そのため、サマーカットをする際は「何ミリにするか」ではなく、愛犬の状態に合っているかを基準に考えることが大切です。
カットの長さに迷う場合は、トリミングサロンや動物病院に相談しながら決めると安心でしょう。

サマーカットのメリット

サマーカットには、見た目がすっきりするだけでなく、日常のお手入れがしやすくなるなど、飼い主さんにとってもうれしいメリットがあります。
ここでは、サマーカットによって得られる主なメリットを紹介します。

通気性をよくして毛玉を防ぎやすくなる

被毛を短く整えることで、毛の内側に湿気がこもりにくくなり、通気性がよくなる点はサマーカットのメリットのひとつです。
また、毛を一定の長さにそろえることで毛同士の摩擦が減り、絡まりにくくなるため、毛玉ができにくくなる効果も期待できます。 特に、毛量が多いワンちゃんや、被毛が絡まりやすい場合には、日常の被毛管理がしやすくなるでしょう。

シャンプーなどのお手入れがしやすくなる

被毛を短く整えることで、シャンプーなどにかかる時間を短縮しやすくなります。泡立てやすすぎがスムーズになり、洗い残しが起きにくい点もメリットといえるでしょう。 また、被毛が短いと乾かす時間も短く済みやすく、ドライヤーの音や風、熱が苦手なワンちゃんにとっては、負担を軽減できる場合があります。
日常的なお手入れにかかる時間や手間を減らしたい飼い主さんにとっても、うれしいポイントです。

汚れにくく清潔を保ちやすい

被毛を短く整えておくことで、散歩や外出時に汚れが毛の奥まで入り込みにくくなります。
泥やほこりが付着しても絡まりにくいため、被毛の状態を清潔に保ちやすくなる点はメリットといえるでしょう。 また、軽い汚れであれば拭き取りなどの簡単なケアで対応しやすく、こまめなお手入れがしやすくなります。

皮膚の異変に気づきやすくなる

被毛を短く整えることで、皮膚の状態が確認しやすくなり、赤みや湿疹、フケ、かゆみなどの異変に気づきやすくなる場合があります。
とくに、皮膚トラブルを起こしやすいワンちゃんや、日常的に体を触ってケアをしている場合には、変化を早期に発見しやすくなる点はメリットといえるでしょう。

サマーカットのデメリットとリスク

サマーカットにはメリットがある一方で、被毛を短くすることで起こり得るデメリットやリスクもあります。
特に、被毛タイプや皮膚の状態によっては、体調や皮膚トラブルにつながる場合もあるため、注意が必要です。

紫外線の影響を受けやすくなる

サマーカットで被毛を短くしすぎると、皮膚が直接紫外線を受けやすくなります。
特に、日中の散歩や屋外で過ごす時間が長い場合には、皮膚に赤みや炎症が起こるリスクが高まることがあります。 紫外線による影響を防ぐためには、カットの長さに配慮するほか、散歩の時間帯を工夫するなどの対策も大切です。

虫刺されや乾燥のリスクが高まる

犬の被毛は、皮膚を外的刺激から守る役割があります。サマーカットで地肌が見えるほど被毛を短くすると、ノミ・マダニ ・蚊などの虫に刺されやすくなることがあります。
また、被毛が短いことでエアコンの風が皮膚に直接当たり、乾燥しやすくなる点も注意が必要です。
特に被毛を短く刈った場合は、皮膚への負担が増える可能性があります。

毛が伸びなくなることがある(バリカン後脱毛症)

サマーカットでバリカンを使用し、被毛を短く刈ったあと、毛が生えそろわなくなることがあります。
この状態は「バリカン後脱毛症」と呼ばれ、毛がまばらなまま長期間続いてしまうのが特徴です。
すべてのワンちゃんに起こるわけではありませんが、サマーカット後に被毛の生え方が変わる可能性があることは、あらかじめ理解しておく必要があります。

バリカン負けのリスクがある

サマーカットでバリカンを使用すると、皮膚に刺激が加わり、バリカン負けを起こすことがあります。
特に、首元、顎の下、お腹など皮膚の薄い部位では起こりやすく、赤みやかゆみが出るのが特徴です。 かゆみが出ると、ワンちゃんが患部を引っかいてしまい、症状が悪化する場合もあります。

犬は毛を短くしても涼しいとは限らない

犬の被毛には、外気の影響を和らげて体温調節を行う働きがあります。
特に被毛が密なタイプの犬では、被毛がクッションのような役割を果たし、暑さや寒さから体を守っています。
そのため、被毛を極端に短くすると、外気の影響を直接受けやすくなり、必ずしも涼しく感じるとは限りません。
毛を短くすることで快適になる場合もありますが、「短くすれば涼しくなる」とは一概にいえないことを理解しておく必要があります。

サマーカットに向いている犬種・避けたほうがいい犬種

サマーカットが適しているかどうかは、犬種だけで一概に判断できるものではありません。
被毛の生え方や役割によって注意点が異なるため、愛犬の被毛タイプの特徴を理解したうえで検討することが大切です。 以下では、サマーカットを考える際の目安として、被毛タイプごとの考え方を紹介します。

サマーカットが向いている犬(シングルコート)

被毛が伸び続けるシングルコートの犬は、サマーカットをしても再び毛が伸びてくるケースが多く、比較的カットスタイルの調整がしやすい傾向があります。
日常的にトリミングが必要な犬では、夏場のお手入れ負担を軽減する目的で、サマーカットを検討することもあります。代表的な犬種としては以下です。

・プードル
・シーズー
・マルチーズ
・ミニチュア・シュナウザー
・ビション・フリーゼ
・ヨークシャー・テリア

ただし、これらの犬種であっても、年齢や皮膚の状態、生活環境によっては短くしすぎない配慮が必要です。
はじめてサマーカットを行う場合は、トリミングサロンや動物病院に相談してから決めると安心でしょう。

サマーカットを避けたほうがいい犬(ダブルコート)

被毛が生え替わる仕組みをもつダブルコートの犬では、被毛が外気の影響を和らげる役割を担っているため、サマーカットには注意が必要とされています。
被毛を短く刈り込むことで、毛の生え方が変わったり、皮膚トラブルにつながったりする可能性があるためです。代表的な犬種としては以下です。

・柴犬
・コーギー
・ポメラニアン
・ダックスフンド(ロングコート)
・チワワ(ロングコート)
・サモエド
・シベリアン・ハスキー
・ゴールデン・レトリーバー
・シェットランド・シープドッグ

これらの犬では、被毛全体を短く刈り込むのではなく、ブラッシングによる抜け毛の除去や、毛量を整える程度のトリミングで暑さ対策を行う方法もあります。
サマーカットを検討する場合は、被毛の役割やリスクを理解したうえで、専門家と相談しながら慎重に判断しましょう。

サマーカットを行う際のポイント

サマーカットを愛犬のスタイルとして取り入れる場合は、時期の選び方や施術方法、カット後のケアなど、いくつか押さえておきたいポイントがあります。
ここでは、サマーカットを行う際に知っておきたい基本的なポイントを紹介します。

サマーカットはいつからいつまで?

サマーカットを行う時期に明確な決まりはありませんが、暑さが本格化する前の5~6月頃を目安にするとよいでしょう。
気温が上がりきる前に整えておくことで、夏の間を比較的快適に過ごしやすくなります。 一方、サマーカットを終える時期も、その年の気候や地域、愛犬の体調によって異なります。
一般的には8月下旬〜9月上旬頃までをひとつの目安とし、気温が下がり始める時期以降は、無理に短いカットを続けないよう配慮することが大切です。

サマーカットは自宅でもできる?

サマーカットは、基本的にはトリミングサロンや動物病院で行うことをオススメします。
自宅で行うこと自体は不可能ではありませんが、カットの方法や道具の扱いを誤ると、愛犬の皮膚を傷つけたり、思わぬ事故につながったりする恐れがあります。
とくに、バリカンを使用する場合は皮膚への負担が大きくなりやすいため、専門知識のない状態で行うのは注意が必要です。
安全面を考えると、経験のあるトリマーや動物病院に任せる方が安心でしょう。

サマーカットのオススメの長さは?

サマーカットの被毛の長さに、明確な正解はありません。
ワンちゃんの被毛タイプや皮膚の状態、生活環境によって、適した長さは異なります。
初めてサマーカットを行う場合は、地肌が見えるほど短くしすぎないことをひとつの目安にするとよいでしょう。
短くしすぎると、紫外線や外的刺激を直接受けやすくなり、皮膚トラブルにつながる可能性があります。 カットの長さに迷った場合は、トリミングサロンや動物病院に相談しながら、愛犬に合った仕上がりを決めることが大切です。

サマーカット後のケアについて

サマーカット直後は、皮膚が刺激を受けやすい状態になっています。
カット当日はシャンプーや長時間の屋外遊びは控え、皮膚に赤みやかゆみなどの異変が出ていないかを確認しましょう。
しばらくの間は皮膚が敏感で乾燥しやすいため、必要に応じて保湿ケアを行うことも大切です。
外出時には紫外線対策としてUVカットウェアを活用したり、散歩の時間帯を日差しの強くない夕方以降にするなど、皮膚への負担を減らす工夫をすると安心です。

サマーカット以外の夏の暑さ対策

愛犬の暑さ対策は、サマーカットだけに頼る必要はありません。
室内環境の工夫や散歩の仕方、日常のケアを見直すことで、夏の負担を軽減できる場合もあります。
ここでは、サマーカット以外で取り入れたい暑さ対策について紹介します。

室内でできる暑さ対策

自宅で過ごす時間が長い場合、暑さ対策として基本になるのがエアコンによる室温調整です。
その日の気温や湿度、ワンちゃんの体格や感じ方にもよりますが、エアコンの設定温度を調節して室温は20℃前後、湿度は50~60%程度を目安にするとよいでしょう。
ただ、個体差が非常に大きいため、こまめに愛犬の様子を観察する必要があります。
また、犬用のクールマットやベッド、アルミ・石材のプレートなどを設置しておくと、愛犬が自分で涼しい場所を選べて快適に過ごしやすくなります。
室内ではいつでも水分補給ができるよう、新鮮な水を十分に用意しておくことも大切です。

散歩時の工夫

夏場の散歩は、朝夕の比較的涼しい時間帯を選ぶことが基本です。
外気温は25℃前後をひとつの目安とし、できるだけ日陰の多いルートを選ぶと、愛犬の負担を減らしやすくなります。
また、夕方でも路面が高温になっていることがあるため、散歩前にアスファルトの温度を確認することも大切です。
犬用のネッククーラーやクールウェアを取り入れると、暑さ対策の補助として役立つ場合があります。
ワンちゃんは人のように汗をかいて体温を調整できないため、散歩中はこまめな休憩と水分補給を意識しましょう。

被毛・皮膚のケア

毎日のブラッシングも、夏の暑さ対策のひとつです。
特に被毛量が多い犬では、抜け毛を取り除くことで通気性がよくなり、蒸れを防ぎやすくなります。

シャンプーの頻度は、月に1~2回程度を目安に、被毛や皮膚の状態に合わせて調整しましょう。
日本の夏は高温多湿なため、汚れが残ったままだと細菌が繁殖しやすくなりますが、洗いすぎると皮膚の乾燥を招くおそれもあります。
また、夏場は自然乾燥で済ませがちですが、被毛の内側が生乾きになりやすく、不衛生になりがちです。
シャンプー後はドライヤーでしっかり乾かし、必要に応じて保湿ケアを行うことで、皮膚への負担を軽減できます。

水分補給・食事

夏の暑さ対策では、こまめな水分補給が基本です。
ワンちゃんは体内に水分を多く蓄えられないため、いつでも水を飲める環境を整えておきましょう。

水をあまり飲まない場合は、犬用スープやミルク、ウェットフードを取り入れることで、水分を補いやすくなることもあります。
食事は消化のよいものを中心に、胃腸に負担をかけすぎないよう配慮することが大切です。

暑さで注意したい体調のサイン

さまざまな暑さ対策を行っていても、体調や環境によっては不調のサインが現れることがあります。
日常の中で、次のような体調の変化に早めに気づけるようにしておきましょう。

・呼吸がハアハアと荒い
・普段より落ち着きがない
・フラフラしている
・よだれが多い
・水を飲まない、フードを食べない
・横になってばかりで起き上がらない
・ぐったりとして元気がない

こうした症状を見かけたらすぐに犬を涼しい場所へと移動し、必要に応じて動物病院を受診しましょう。
また、夏は体調を崩しやすい季節でもあることから、いつもと様子が異なっていないか、よく愛犬の状態を見てあげるようにしてくださいね。

サマーカットと夏の暑さ対策で大切なこと

サマーカットは、ワンちゃんが夏を快適に過ごすためのスタイルとして知られていますが、カットの長さや被毛の状態によっては、皮膚トラブルにつながることもあります。

サマーカットを検討する際は、トリミングサロンや動物病院で相談しながら、愛犬に合った方法を選ぶことが大切です。 また、夏の暑さ対策はカットだけに頼らず、温度管理や散歩時間の工夫、水分補給などを組み合わせて、総合的に取り組みましょう。

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