「耳掃除の頻度はどのくらい?」「嫌がってうまくできない…」そんな悩みを持つ飼い主さんは多いですよね。
ワンちゃんの耳はデリケートで、間違ったケアが外耳炎などのトラブルを引き起こすこともあります。
本記事では、耳掃除の正しいやり方・頻度・必要な道具から、嫌がる子への対処法・病院に行くべき症状まで、獣医師監修のもとわかりやすくまとめました。

この記事の監修者:松本千聖先生
岐阜大学応用生物科学部獣医学課程を卒業後、3年ほど獣医師として動物愛護団体付属動物病院やペットショップ付属動物病院にて主に一次診療業務、ペット保険会社での保険金査定業務などに従事。
現在は製薬関係の業務に携わりつつ、ペットの健康相談業務、動物関係のライティングに加えてペット用品並びに犬猫の健康記事に関する監修経験多数。なおプライベートでは個人で保護猫活動並びに保護猫達の健康管理実施中。
犬の耳掃除は必要?耳の構造と注意したい犬種を解説

耳ケアを正しく行うには、まず犬の耳の仕組みを知ることが大切です。 耳の構造や特徴、トラブルが起きやすい犬種について確認しておきましょう。
犬の耳の構造と役割
犬の耳は、大きく4つのパーツ(耳介・外耳・中耳・内耳)に分かれています。
一番外側にある「耳介」は、音を集めるためのパーツです。耳介の形は立ち耳、垂れ耳など犬種によってさまざまです。
耳介から鼓膜までは「外耳」といい、音を鼓膜へと導く役割をします。途中でL字に曲がっているのが特徴です。
鼓膜の内側は「中耳」といい、鼓膜が受け止めた音を耳小骨によってさらに奥へと伝えます。
耳の一番奥にあるのが「内耳」です。蝸牛と呼ばれる聴覚器官のほかに、体のバランスをつかさどる三半規管があります。
犬は人間よりも聴覚が鋭く、音の方向や距離感を把握する能力に長けています。逆にいうと、耳の調子が悪くなると周囲の環境を把握しづらくなるため、愛犬にとって大きなストレスにつながります。だからこそ、耳を健康に保つケアは愛犬のQOL(生活の質)を守ることにも直結します。
犬の耳掃除はやった方がいいの?
犬の耳は、自然に汚れが外へと排出される「自浄作用」が備わっているため、飼い主さんが耳の奥まで掃除をする必要はありません。
普段のケアとしては、外に出てきた垢や汚れを専用シートでふき取る程度でOKです。
ただし、耳の形状によっては外耳炎や悪臭などのトラブルを抱えてしまうこともあるため、定期的なチェックとケアは必要です。「奥まで掃除しなくていい」と「定期的なチェックとケアは必要」はセットで覚えておきましょう。
耳トラブルが起きやすい犬種|垂れ耳・耳毛・短頭種は要注意
耳のトラブルが起こりやすいのは、「垂れ耳」「耳毛が多い」「短頭種」といった特徴をもつ子たちです。
垂れ耳の犬種(コッカースパニエル、ビーグル、ダックスフンドなど)は、耳介が耳の穴を塞いでしまうため、湿気がたまりやすいです。
耳毛が多いトイプードルやミニチュアシュナウザーも耳垢が絡まり、汚れやすい傾向にあります。
また、フレンチブルドッグやパグなどの短頭種(マズルが短い犬)は耳道がとても狭く、耳のトラブルも増えがちです。
上記のような特徴がある子は、とくに耳のチェックを欠かさないようにしましょう。
犬の耳掃除の頻度はどのくらい?犬種別の目安を解説

耳のチェックは週に1回、耳掃除は月に1~2回が目安です。 ただし、犬種による耳の違いによって、必要な回数が異なります。
垂れ耳・耳毛が多い犬種はこまめなケアが必要
「垂れ耳」「耳毛が多い」などの特徴があると、耳が汚れやすいです。
また、アメリカンコッカースパニエルなどの犬種は「耳垢腺」が遺伝的に多く、耳垢がたまるペースが速いです。
上記のような子はこまめにチェックし、2週に1回ほど耳掃除をしましょう。
立ち耳の犬種は回数を減らしてもOK
立ち耳は通気性がよいため、耳の汚れが比較的たまりにくいです。耳が汚れていないなら、掃除の回数は減らしてもよいでしょう。
ただし「汚れていないから」と長期間放置するのは禁物です。月1回程度は目視でチェックする習慣をつけておきましょう。
犬の耳掃除のやり方|自宅での手順・必要な道具を解説
「耳が汚れているかも?」と感じたら、愛犬に適した方法で掃除をしましょう。飼い主さんが自宅でできる正しい手順について説明します。

耳掃除に必要な道具は?
愛犬の耳掃除に必要なのは、次の2つです。
・イヤークリーナーまたはガーゼ
イヤークリーナーは犬の耳専用のものをペット用品店で購入しましょう。低刺激性のアルコールフリー、無香料のものがオススメです。
【ステップ別】耳掃除をする手順
耳掃除は、愛犬が落ち着いているタイミングに行いましょう。
①リラックス
いきなり耳に触れられると嫌がる子が多いので、まずは体をなでてリラックスさせます。やさしく声をかけながら頭や顔回りをなで、耳に触らせてくれたらたくさん褒めてあげましょう。
②耳の中をチェック
耳掃除をする前に、耳の状態を確認します。 赤みや悪臭などの異変がないかチェックして、いつもと違う様子があったら耳掃除は中断しましょう。
③拭き取り
コットンまたはガーゼにイヤークリーナーをしみ込ませ、耳の汚れを拭き取ります。耳のひだに耳垢がたまるので、やさしく丁寧に拭いてあげましょう。
④ご褒美
耳掃除が終わったあとは、体を撫でたり声をかけたりして褒めてあげてください。「耳掃除のあとは褒めてもらえる」という感覚が身につくと、次回の耳掃除がいっそうスムーズになります。
どこまで掃除していいの?耳道内を触らない理由
耳垢を拭き取るのは、見える範囲までにとどめましょう。無理に耳道を掃除するのはNGです。愛犬が嫌がるのはもちろん、汚れをさらに奥へと押し込んだり、皮膚を傷つけたりする原因になります。
犬の耳掃除でやってはいけないことは?

愛犬の耳をケアするときは、次のような点に注意しましょう。
綿棒・耳かきは使わない
犬の耳を掃除するときは、綿棒を使うのは避けましょう。 耳垢や汚れを奥へと押し込んでしまうおそれがあります。
耳かきも犬の皮膚を傷つけてしまうリスクがあるので、使用はNGです。
アルコール・ウェットティッシュは使わない
アルコールを含ませた除菌シートは、犬の耳掃除に向いていません。
アルコールは消毒作用が強すぎるため、耳の皮膚を守ってくれる常在菌を死滅させ、皮膚のバリア機能を弱めてしまいます。
アルコールを含まないウェットシート(赤ちゃん用のおしり拭きなど)もオススメできません。微量に含まれる防腐剤などの成分が、犬の耳に合わない可能性があります。
自己判断で耳道にイヤークリーナーを注がない
耳の奥に液体を注入するタイプのイヤークリーナーも市販されていますが、自己判断での使用は避けてください。
耳に病変がある場合、かえって症状を悪化させてしまいます。また、パピーやシニア犬は薬液を外に出す動作(首ふり)がうまくできず、洗浄液が内部にとどまることも。
耳洗浄液の使用は、獣医師から指示があった場合のみにしましょう。
耳毛を自分で抜かない
犬の耳毛は、耳の健康を守る役割を果たしており、無理に抜くことは推奨されていません。耳毛を抜くと、耳の中の皮膚が傷つきやすくなり、細菌感染や外耳炎のリスクが高まるともいわれています。耳毛を抜かないケアが基本であり、耳毛が絡んで固まっている場合や耳が蒸れやすい犬種、耳毛によって耳に異常が起きている場合などには、獣医師によってカットで整えることが適切です。
過度に耳掃除しすぎない
毎日のように頻繁に耳を掃除すると、皮膚のバリア機能を弱めてしまい、逆に炎症などのトラブルにつながることがあります。
耳掃除は月に1~2回を目安にし、どうしても気になる場合は汚れた箇所だけ拭き取るようにしましょう。
犬が耳掃除を嫌がるときの対処法

耳掃除を嫌がる子は多いです。嫌がる理由とトレーニング方法について見ていきましょう。
犬が耳掃除を嫌がる主な原因
愛犬が耳掃除を嫌がる大きな原因は、「耳を触られることに慣れていないから」です。
また、過去に耳を触られて痛かったなど、トラウマがあるとひどく嫌がる場合があります。
ほかにも耳に炎症があって痛いなど、耳のトラブルによる理由も考えられます。
少しずつ慣れさせるトレーニングの手順
耳掃除に慣れてもらうには、日頃のスキンシップから始めるのが近道です。
背中やおなかなど別の場所からなで、徐々に頭や顔周り、そして耳の近くといったようにステップを踏んでいきます。
耳に触らせてくれたら、ポジティブな言葉でしっかり褒めてあげましょう。おやつを与えるのもよい方法です。
「耳に触られるのはいいこと」と愛犬が覚えてくれるように、それぞれの子のペースでゆっくり慣れさせてあげてください。
どうしても嫌がる場合はプロ(サロン・病院)に任せる
飼い主さんが努力しても、どうしても耳掃除を嫌がる子はいるものです。そうしたときは無理に自宅で行うのではなく、トリミングサロンや動物病院で耳掃除をしてもらいましょう。
とくに「耳にニオイがある」「耳垢がたまりやすい」「耳毛が多い」といったケースでは、プロの手に委ねた方がスムーズです。
耳垢の色・状態でわかる病気のサイン

耳垢の色や状態は、耳の病気を早期発見するための大切なサインです。色別に何を意味するのか確認しておきましょう。
健康な耳垢の状態
通常、犬の耳垢は薄い黄色や淡い茶色で、量はそれほど多くありません。ニオイもほとんどなく、質感は乾燥しているかやや湿っている程度でしょう。
黒・茶色でべっとりした耳垢
黒~茶色をした耳垢は、マラセチア性外耳炎の可能性があります。
マラセチアは犬の耳に常在する酵母で、耳の環境が悪いときに異常増殖を起こすことがあります。
黄色でドロっとしている・膿のにおい
黄色でドロっとした、もしくはカチカチに固まった耳垢が出るときは、細菌感染による外耳炎が考えられます。皮膚が膿んでいる状態で、独特のにおいを発します。
赤黒い耳垢・強いかゆみは耳ダニのサインかも
赤黒く乾いた耳垢が出るときは、耳ダニが原因の外耳炎かもしれません。散歩で藪を歩いたり、耳ダニに感染している犬と接触したりすると感染することがあります。かゆみが強いのも特徴です。
犬の耳掃除は動物病院に行くべき?受診の目安

気になる耳垢や赤み、かゆみがあるときは、動物病院で耳を診てもらうのがオススメです。来院の判断基準や症状のチェックリスト、動物病院での一般的な処置についてお伝えします。
自宅ケアで対応できるケース・できないケースの判断基準
耳に異常がなく、愛犬もそれほど嫌がる様子がなければ自宅でケアをしても大丈夫です。
反対に、耳に何らかの症状が出ている場合は無理せず動物病院を受診しましょう。
「飼い始めでどうケアしたらいいか分からない」というときも、獣医に相談するのは良い判断です。犬種や体質に合ったケア方法を教えてもらうことができます。
動物病院に行くべき症状チェックリスト
次のような症状があるときは、動物病院を受診しましょう。
・耳から悪臭がする
・耳垢が異常に多い
・耳をかゆがる様子がある
・黒っぽい耳垢や膿のような耳垢がある
「犬が嫌がって耳掃除をさせてくれない」「耳垢が多い体質で、家だと大変」といった場合にも、動物病院を利用するのがベターです。
病院での耳掃除・治療はどんなことをするの?
動物病院では耳をチェックして、問題がなければ耳洗浄をして終わりです。
簡単に拭き取るだけの場合もあれば、耳の中にイヤークリーナーを注入し、マッサージをして十分汚れを浮かせたあとに拭き取ります。必要な場合は耳毛をカットすることもあります。
外耳炎・中耳炎などを疑う症状があるときは、耳道内部の状況を知るために耳鏡で検査をします。症状の原因に合わせて、耳洗浄や点耳薬、内服薬による治療を行いますが、重症の場合は別途の処置が必要なこともあります。
愛犬の耳を健康に保つ日常ケアのポイント

耳のトラブルを予防するには、日頃からの習慣が大切です。取り入れやすい日常ケアのポイントを3つご紹介します。
耳チェックを日課にするタイミング
つい忘れがちな耳のチェックは、日常生活の区切りのタイミングで行うと習慣化しやすいです。 「散歩のあと」「おやすみ前」といったリラックスタイムに組み込んでみましょう。
シャンプー時に耳に水が入らないようにする
耳に水が入ると、外耳炎などのトラブルにつながることがあります。
耳の周りにはシャワーを当てず、濡らして絞ったタオルを使って拭くように洗うとよいでしょう。
軽く湿らせたコットン玉で耳をふさいでおくのもよい方法です。シャンプー後は必ずコットン玉を取り出すようにしてください。
梅雨・夏は特に注意!
湿気の多い梅雨・夏場は外耳炎を起こす子が増える時期です。
耳の中が蒸れると細菌やマラセチアが増殖しやすくなり、皮膚の赤みやかゆみ、悪臭などの初期症状が現れます。
近年は温暖化の影響で、4月から暑くなる日が増えています。春頃から耳のチェックをこまめに行い、異変に気づいたら動物病院を受診しましょう。
耳掃除は正しいやり方と頻度を守って愛犬の耳を健康に保とう
犬の耳は週に1回のチェック、月に1~2回の掃除が基本です。綿棒や耳かきは使用せず、コットンと犬専用のイヤークリーナーを使ってやさしく汚れを落としましょう。また、過度な耳掃除は皮膚のバリア機能を弱めるため、やりすぎにも注意が必要です。
耳垢の色や状態がおかしいときは、病気のサインかもしれません。放っておくと悪化する可能性があるので、「おかしいな」と感じたら早めに動物病院へ相談しましょう。
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