肉球は、衝撃吸収や滑り止め、体温調節など、ワンちゃんの生活において非常に重要な役割を担っています。しかし、その機能ゆえにトラブルも起きやすいデリケートな部位です。
そんな肉球が赤くなっていたら心配になりますよね。「病院に連れて行くべき?」「自宅で様子を見ても大丈夫?」など、判断に迷う飼い主さんも多いでしょう。
本記事では、獣医師監修のもと肉球が赤くなる原因から日々のケア方法、異常が見られたときの対処法まで詳しく解説します。

この記事の監修者:松本千聖先生
岐阜大学応用生物科学部獣医学課程を卒業後、3年ほど獣医師として動物愛護団体付属動物病院やペットショップ付属動物病院にて主に一次診療業務、ペット保険会社での保険金査定業務などに従事。
現在は製薬関係の業務に携わりつつ、ペットの健康相談業務、動物関係のライティングに加えてペット用品並びに犬猫の健康記事に関する監修経験多数。なおプライベートでは個人で保護猫活動並びに保護猫達の健康管理実施中。
犬の肉球の基本情報

ワンちゃんの足の裏にある肉球は、外側にある硬い角質層と内側の・弾力のある組織・脂肪組織で構成 されており、さまざまな役割を担っています。主な機能は次の5つです。
(1)クッション機能
外側の硬い角質層と、内側の弾力ある脂肪組織の組み合わせにより、歩行や走行時の衝撃を吸収し、骨や関節への負担を和らげています。
(2)滑り止め機能
肉球の表面の凹凸とした構造が地面との摩擦を生み、滑りにくくしています。これにより、走行中でも急停止することが可能です。
(3)体温調節機能
ワンちゃんは人間のように全身で汗をかけないため、肉球から汗を分泌して体温を調整しています。また、暑いときだけでなく、緊張時に肉球に汗をかくこともあります。
(4)感覚器官としての機能
肉球には多くの神経と血管が通っており、地面の温度や質感を感じ取るセンサーとして働いています。感覚器官として非常に敏感な部位です。
(5)保護機能
肉球の厚く硬い皮膚が、地面の熱や冷気、凹凸から足を守っています。
このように肉球は多彩な機能を持っているからこそ、トラブルが起きるとワンちゃんの生活の質に大きく影響する可能性があるのです。
健康な肉球の状態とは?
健康な肉球とは、主に次のような状態をいいます。
・湿度:ややしっとりしている
・色:全体が均一で自然な色合い
・表面:適度にざらついている
また、以下のような症状が見られる場合は何らかのトラブルのサインかもしれません。
・熱を持っている
・乾燥して皮がむけている
・片足を上げて歩いている
ワンちゃんの異変にいち早く気づくためにも、日頃から肉球の状態をチェックすることが大切です。今回は比較的よく見られる症状である赤みについて、以下で詳しく解説していきます。
犬の肉球が赤くなる原因

ワンちゃんの肉球が赤くなる原因は、けがや体質・生活環境などさまざまです。中でも多いのは、指間炎・やけど・ストレスの3つ ともいわれています。
ここでは、肉球が赤くなる代表的な原因について詳しく見ていきましょう。
指間炎
指間炎は、犬の指と肉球の間に起こる炎症です。細菌や真菌(カビ)による感染、アレルギー反応、外傷、ストレスなど多様な原因で発症します。
主な症状は、肉球や周囲の赤みで、進行すると皮膚のただれ、強いかゆみ、脱毛が見られることも。 ワンちゃんが足をしきりになめたり噛んだりすることで悪化し、治療が難しくなる場合もあるため、早期の動物病院受診が大切です。
やけど
やけどが原因で肉球が赤くなることも。特に、真夏の炎天下の中での散歩でやけどをすることがあります。
主な症状は、赤みや痛み、頻繁になめる行動などです。やけどが進行して皮膚がめくれると、雑菌が入りやすくなり、感染症のリスクが高まります。 確実にやけどが原因の場合は、応急処置として流水や濡れタオルで冷やしつつ、早急に動物病院で手当てを受けましょう。
ストレス
ストレスや不安から肉球を過度になめて炎症を起こすこともあります。
主な症状は、赤みや痛み、しきりに足をなめる行動などです。
原因を取り除いても炎症がすぐに治るとは限らないため、ストレス要因の除去とともに、必要に応じてエリザベスカラーや靴下を着用し、早めに動物病院を受診するようにしましょう。
アレルギー・アトピー
肉球の赤みは、特定の食材が原因となる食物アレルギーや、ノミ・ダニによるアレルギー、複数の要因が絡み合った原因不明のアトピーが関係していることも。
主な症状は、強いかゆみ、皮膚の赤みや炎症などです。ワンちゃんが激しく体をかいたり、噛んだり、なめたりする行動が見られるでしょう。炎症は耳、首、腹部、尻尾の付け根など、特定の部位に出やすい傾向があります。
症状が進行すると、かきむしりによって部分的な脱毛が生じたり、細菌や真菌による二次感染が起きたり、膿皮症などの皮膚炎に発展する可能性も。
そのほかにもフケや湿疹が出るなど症状は多岐にわたるため、異変に気づいたら早めに動物病院で診察を受けることが重要です。
感染症
肉球に細菌や真菌が感染することで、肉球が赤くなることもあります。
主な症状としては、赤みやかゆみ、腫れですが、症状が進行するとワンちゃんが足を頻繁に気にするようになるでしょう。
肉球の異常に気づいたら早めに獣医師に相談するのが、悪化を防ぐポイントです。
自己免疫疾患
自己免疫疾患とは、免疫システムに異常が生じ、自分の体を攻撃してしまう病気です。
主な症状は、肉球の赤みや潰瘍が挙げられますが、そのほかの部位にも症状が現れる場合が多いでしょう。
異常が見られたときは、早急に獣医師の診断を受け、適切な治療を行うことが大切です。
外傷
トゲやガラス片などが刺さって外傷を負ったことが原因で肉球が赤くなる場合もあります。
主な症状は、赤みのほかに痛みやしきりになめる行動が見られるでしょう。
異物除去は難しく、ワンちゃん自身も痛がって触らせてくれないことがほとんど。そのまま放置すると、細菌感染を引き起こす恐れがあるので注意が必要です。
特にガラス片の場合、奥深くまで入り込むと治療が困難になるため、患部を清潔に保ち、できるだけ早く動物病院を受診しましょう。
巻き爪
肉球が赤いのは巻き爪が原因の可能性も。伸びすぎた爪が皮膚や肉球に食い込んでいることが考えられます。
主な症状は赤みや傷です。中でも傷ができている場合は、肉球に刺さっている爪を抜く必要があり、自宅での対処は難しいため、動物病院で安全に処理してもらうようにしましょう。
赤みのみでも判断に迷うときは獣医師に相談するのが一番です。
犬の肉球が赤いときは病院に行くべき?

愛犬の肉球が赤くなっているのを見つけたら、早めに動物病院を受診するのが安心です。
放置すると症状が進行し、細菌感染を引き起こす可能性もあります。そうなると、当初は塗り薬だけで対応できたはずの軽症が、内服薬や長期の治療を必要とする重症へと悪化してしまうことも。
ワンちゃんにとっても飼い主さんにとっても負担が大きくなるため、異変に気づいたらできるだけ早く病院に行くようにしましょう。
また、適切な治療を受けるためには日頃の愛犬の様子を振り返り、次のようなポイントを確認しておくのがオススメです。
・かゆがるようなしぐさをしていないか
・暑い時間帯に散歩をしていなかったか
・肉球をしきりになめる行動がなかったか
・変わった食べ物を与えていないか
・生活環境に変化はなかったか
これらの症状や行動に心当たりがあれば、受診時に獣医師へ伝えることで、より正確でスムーズな診断・治療につながるでしょう。
飼い主さん独自の判断で処置するのは避けて
肉球の赤みや炎症に対して、飼い主さんが独自の判断で処置をするのは避けてください。
特に、人間用の薬をワンちゃんに塗るのは、成分が合わずに症状を悪化させてしまう恐れがあります。また、原因がやけどでない場合は、冷やすという処置が逆効果になる可能性も。
少しでも気になることがあれば、まずは獣医師に相談するようにしてください。専門的な診断と適切な治療を受けることが、愛犬の健康を守る最も確実な方法です。
犬の肉球が赤いときに自宅でできる応急処置はある?

愛犬の肉球に異常が見られたら、すぐに動物病院を受診するのが一番ですが、休診日や夜間などでどうしてもすぐに病院に行けない場合かつ、ワンちゃんが肉球を触るのを嫌がらないときに限り、以下の応急処置が可能です。
ただし、これらの処置はあくまで一時的なものなので、自己判断で完治したと思わず、後日必ず獣医師に診てもらうようにしてください。
患部を清潔にする
肉球をぬるま湯で優しく洗い、汚れや異物を取り除きましょう。清潔なガーゼやタオルで水分を拭き取り、安静にします。
犬が肉球をなめるのを防ぐ
ワンちゃんが肉球をなめたり噛んだりして症状が悪化するのを防ぐために、エリザベスカラーを着ける、もしくは靴下を履かせるなどの工夫をしましょう。
冷やして炎症を抑える(やけどの場合)
真夏の暑い時間に散歩に出かけて、帰宅後に愛犬の肉球が赤くなっていた場合は、やけどの可能性が高いといえます。その際の応急処置として、流水や濡らしたタオルで肉球を10分ほど冷やす方法があります。
ただし、やけどでなかった場合、症状を悪化させてしまう恐れがあるので、判断には注意が必要です。
肉球のトラブルを防ぐために日々の生活で意識したいこと

肉球のトラブルを防ぐために、日々の生活で意識すると良いこと、飼い主さんがやりがちな誤ったケアなどについて紹介します。
肉球を清潔に保つ
普段から肉球を清潔に保つことが大切です。散歩後は手足を拭き、定期的にシャンプーで肉球を洗うと良いでしょう。ただし、後述するようにシャンプーのしすぎは禁物です。
また、冬場は乾燥しないように犬用の保湿クリームでケアしてあげるのがオススメ。その際は人間用のクリームは使わずに、必ず犬用のものを使いましょう。
散歩の時間や歩く道に注意する
やけどや外傷を防ぐためには、散歩の時間やルートに注意が必要です。特に、夏の日中はアスファルトが高温になるため、早朝や夕方の涼しい時間帯に散歩をするようにし、出かける前には地面の温度を手で確認しましょう。
冬は寒さに弱い犬種やシニア犬、持病のあるワンちゃんの場合、外に出る前に玄関などで徐々に体を慣らすことが大切です。融雪剤が撒かれた路面も肉球への刺激になるため避けましょう。
また、草むらや河川敷などはマダニや感染症のリスクがあるため、できるだけ通らないようにすると良いでしょう。
足を守るという意味で犬用の靴を活用するのも有効です。ただし、無理に履かせるとワンちゃんのストレスになるため、まず室内で慣らし、嫌がらないかどうかを確認するようにしましょう。
肉球の間の毛のトリミングや爪のケアを定期的に行う
肉球のトラブルを防ぐためには、定期的に足裏の毛をカットし、爪をきちんと整えることが大切です。
足裏の毛が伸びすぎると、肉球本来の滑り止め機能が低下し、滑りやすくなるだけでなく、汚れがつきやすくなって細菌や真菌による感染症のリスクも高まります。
また、爪を放置すると巻き爪になり、皮膚や肉球に食い込んで炎症や痛みを引き起こすことも。こうしたトラブルを予防するためにも、日頃からのケアが欠かせません。
特に自宅で爪切りをする際は、犬用の爪切りを使い、すべての爪を切ったか丁寧にチェックしましょう。このとき、ワンちゃんが嫌がるのであれば無理は禁物。爪切りを怖いものだと思わせないためにも、初めのうちは一度に全部切ろうとせず、数日に分けて切るなど少しずつ慣れさせていくことが大切です。
もし自宅でのお手入れが難しい場合は、トリミングサロンや動物病院に相談するのがオススメ。プロの手を借りることで、愛犬も飼い主さんも安心してケアを受けられるでしょう。
シャンプーをしすぎない
ワンちゃんの肉球や皮膚の健康を守るためには、シャンプーのしすぎに注意が必要です。過度な洗浄は、必要な皮脂まで洗い流してしまい、乾燥肌の原因になりかねません。
健康なワンちゃんであれば、月に1回~2回程度、3~4週間に1回のシャンプーを目安とすると良いでしょう。ただし、犬種や体質、皮膚の状態によっても適切な頻度は異なるため、愛犬に合った回数が知りたい場合は、かかりつけの獣医師に相談するのがオススメ。
また、シャンプーをするときは人間用ではなく犬専用のシャンプー剤を使い、ぬるま湯で優しく洗うのが基本です。
愛犬の肉球の健康を守るためには日常的なケアが大事
ワンちゃんの肉球は、衝撃吸収や滑り止め、体温調節など、さまざまな役割を担っています。
毎日の生活を支える重要な部位だからこそ、日々のケアが大切。散歩後は肉球を清潔にし、冬は保湿を心がけましょう。また、定期的な爪切りや肉球周りの毛のトリミングも忘れずに。 ちょっとしたケアがトラブルの予防につながるので、愛犬の健康のためにも肉球の状態チェックを習慣にしてみてくださいね。
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