犬のトリミングとは?頻度・費用・健康を守るポイントを解説【獣医師監修】

犬のトリミングは、見た目を整えるだけでなく、被毛や皮膚の健康を守る上で欠かせないケアです。「そもそもトリミングって何をするの?」「どんな犬に必要?」「どのくらいの頻度で行うべき?」と疑問を持つ飼い主さんも多いのではないでしょうか。この記事では、獣医師監修のもと、トリミングの基本や必要性、頻度や費用の目安、そして自宅ケアの注意点を解説します。愛犬が快適に過ごせるよう、正しいトリミング知識を身につけましょう。

この記事の監修者:松本千聖先生

岐阜大学応用生物科学部獣医学課程を卒業後、3年ほど獣医師として動物愛護団体付属動物病院やペットショップ付属動物病院にて主に一次診療業務、ペット保険会社での保険金査定業務などに従事。
現在は製薬関係の業務に携わりつつ、ペットの健康相談業務、動物関係のライティングに加えてペット用品並びに犬猫の健康記事に関する監修経験多数。なおプライベートでは個人で保護猫活動並びに保護猫達の健康管理実施中。

犬のトリミングとは?何をするの?

ワンちゃんを飼い始めたばかりの方は、「トリミングってどんなことをするの?」と疑問に思うかもしれません。 ここでは、トリミングの内容やグルーミングとの違い、トリミングサロンで実際に行われる施術について紹介します。

トリミングは「毛をカットして整える」こと

トリミングとは、犬の毛を「トリム(カットする)」ことです。
ハサミやバリカンを使って被毛の長さや形を整え、清潔で快適に過ごせるようにします。
見た目を整えるだけでなく、毛玉や汚れを防いで皮膚を清潔に保つためなど、健康面でのメリットもあります。

トリミングとグルーミングの違い

トリミングのほかに、「グルーミング」という言葉もあります。
トリミングが主に被毛をカットして見た目を整えることを指すのに対し、グルーミングは犬の全身を清潔に保つための総合的なお手入れを指します。
たとえばブラッシング、シャンプー、爪切り、耳掃除などがグルーミングにあたります。
トリミングはトリミングサロンでトリマーが行うことが多い一方、グルーミングは飼い主さん自身でも日常的に行えるケアです。
愛犬とのスキンシップや健康チェックを兼ねて、こまめにグルーミングを取り入れるとよいでしょう。

トリミングサロンで行う主な施術は?

多くのトリミングサロンでは、毛をカットする「トリミング」に加えて、シャンプーや爪切りなどのグルーミングもあわせて行っています。
サロンによって内容は異なりますが、主なケアメニューの一例は次の通りです。

・カット
・シャンプー
・ブロー
・足裏のバリカン
・爪切り
・耳掃除
・肛門腺絞り

コース設定もサロンごとに異なりますが、一般的には「シャンプー・カットコース」と「シャンプーコース」の2種類に分かれていることが多いです。
どちらのコースにも、足裏のバリカンや爪切り、耳掃除、肛門腺絞りなどの基本的なケアが含まれているのが一般的です。
また、サロンによっては泥パックやトリートメント、肉球ケア、マッサージなどのオプションメニューを設けている場合もあります。
こうしたケアは毛艶や見た目を整えるだけでなく、犬のリラックスにもつながります。
愛犬の状態や好みに合わせて、必要に応じて取り入れてみましょう。

トリミングが必要な犬と、そうでない犬の違いは?

ワンちゃんの毛の特徴によって、トリミングが欠かせない場合と、基本的に必要のない場合があります。ここでは、それぞれの被毛構造の違いとケアのポイントを見ていきましょう。

シングルコート(被毛が伸び続けるタイプ)

被毛が伸び続ける犬は、定期的なトリミングが欠かせません。
犬の被毛は本来、オーバーコート(上毛)とアンダーコート(下毛)の二層構造になっていますが、「シングルコート」と呼ばれる犬は、どちらかの被毛だけが発達しており、ほぼ一層構造になっています。
そのため、被毛が伸び続ける特徴があり、カットで長さを整える必要があります。
定期的にトリミングを行うことで、毛玉や皮膚トラブルを防ぎ、清潔な状態を保てます。

代表的な犬種:
プードル、シュナウザー、シーズー、マルチーズ、ヨークシャーテリア、ビションフリーゼ など

ダブルコート(季節ごとに毛が抜け替わるタイプ)

一定の長さになると自然に毛が抜け落ちる犬は、基本的にトリミングを行う必要はありません。
「ダブルコート」と呼ばれるこのタイプは、オーバーコート(上毛)とアンダーコート(下毛)の二層構造をしており、下毛は春と秋の換毛期にまとめて抜け落ち、上毛は日々少しずつ生え替わります。
ただし、お尻や足周りなどの毛が伸びすぎると汚れがつきやすくなるため、衛生面を考えて部分的にカットすることがあります。
また、被毛の状態を整えたい場合には、シャンプーやブラッシングを中心にトリミングサロンでケアをするのもオススメです。

代表的な犬種:
柴犬、ポメラニアン、ウェルシュ・コーギー・ペンブローグ、フレンチブルドッグ、チワワ、ダックスフンド(ワイヤーヘアードを除く)など

トリミングをすることで得られるメリットは?

トリミングというと「美しく整えるため、可愛くするため」というイメージがありますが、実際には犬の健康を維持するために必要です。 トリミングを行うと、次のような健康上のメリットがあります。

皮膚病の予防と早期発見

被毛が長くなりやすい犬種は、伸びた毛を放置すると絡まって毛玉になることがあります。毛玉ができると皮膚の通気性が悪くなり、細菌感染による皮膚炎などのトラブルを引き起こします。
また長い毛の奥にノミやマダニなどの外部寄生虫が潜り込み、繁殖してしまうリスクも高まります。
こうしたトラブルを防ぐためには、定期的なトリミングが効果的です。
トリミングによって毛を整えるだけでなく、皮膚の状態をチェックすることもできるため、異常の早期発見・早期対処につながります。

ケガの予防

足周りの毛を伸ばしたままにしておくと、フローリングなどで滑りやすくなり、転倒や関節への負担につながることがあります。
また、目周りの毛が伸びすぎると視界をさえぎり、段差や障害物に気づきにくくなって思わぬケガをすることも。
定期的に足裏や目元の毛を整えることで、滑りやすさを防ぎ、歩行バランスを保ちやすくなります。
特にシニア犬や小型犬は関節が弱い傾向があるため、トリミングで足回りを清潔に整えておくことが大切です。

日常ケアが簡単になる

被毛が長いままだと、口周り・お尻周り・耳の付け根などに汚れが溜まりやすく、ブラッシングやシャンプーのたびに絡みやすくなることがあります。

定期的に被毛を整えておくことで、日常のブラッシングがしやすくなり、シャンプー後のドライも短時間で済むため、自宅でのお手入れがぐっと楽になります。 さらに毛流れが整うことで、皮膚の様子も見えやすくなり、小さな変化にも気づきやすいというメリットもあります。

犬のメンタルケアや社会性向上に役立つ

トリミングで被毛を整えると体がスッキリし、動きやすくなることでストレスの軽減につながります。
また、愛犬の性格や慣れ具合によって差はありますが、トリミングサロンで他の犬やトリマーと触れ合う経験は、社会性を育てる良いきっかけになります。
特に愛犬が子犬の場合、生後4~16週の「社会化期」からトリミングも含めたさまざまな経験を積むことで、成犬になってもあらゆる環境に順応しやすい犬に育ちやすいといわれています。
トリミングは見た目を整えるだけでなく、犬がリラックスして健やかに過ごすための心のケアにもつながる大切な時間です。

トリミングはいつから始める?子犬(パピー)期の注意点

はじめてトリミングを体験するパピーの場合、いつから、どんなことに注意してトリミングを受ければよいのでしょうか。ここでは「パピーのトリミングを検討するときに飼い主さんが知っておきたいこと」をお伝えします。

トリミングを始める時期の目安

初めてトリミングを受ける時期は、一般的に生後4か月頃が目安といわれています。
ただし、狂犬病予防接種と混合ワクチンの接種が完了していることが前提です。
トリミングサロンにはさまざまな犬が集まるため、感染症のリスクを避けるためにも、ワクチン接種が終わってから通うのが安心です。
ワクチンは接種後すぐに効果が現れるわけではなく、免疫がつくまでに一定の時間がかかります。
スケジュールを立てる際は、接種後1〜2週間ほど経過してからトリミングを検討するとよいでしょう。

初めてのトリミングは「慣らし」から

トリミングサロンは、ワンちゃんにとって音や匂い、人などすべてが初めての環境です。
バリカンやドライヤーの音に驚いたり、シャワーのお湯を怖がったりすることもあります。
初回は無理にカットをせず、爪切りやブラッシングなどの短時間ケアだけにしておくのがオススメです。
サロンによっては「慣らしトリミング」として、生後3か月頃から軽いケアを受けられる場合もあります。
短い時間で少しずつ慣らし、終わったあとにたっぷり褒めてあげることで、ワンちゃんは「サロン=楽しい場所」と感じやすくなります。
どのくらいで慣れるかはそれぞれ違うため、様子を見ながら少しずつ進めていきましょう。

初めてのトリミングで注意したいポイント

初めてサロンを訪れる際は、狂犬病予防接種証明書と混合ワクチン接種証明書を忘れずに持参しましょう。
初めての環境で緊張して吐き戻してしまうことがあるため、トリミング前の食事は控えめにし、2〜3時間前までに済ませておくのが理想的です。また、出かける前に排せつも済ませておくと安心です。
施術中の安心感を高めるために、愛犬が好きなおやつを持参するのもオススメです。
施術後にご褒美として与えることで、サロンにポジティブな印象を持ちやすくなります。
また、日頃から口周りやお腹、足先など体の各部を触る練習をしておくと、施術中に落ち着きやすくなります。
触られるのが苦手なワンちゃんの場合は、予約時にその旨をあらかじめサロンへ伝えておきましょう。
なお、初めてのトリミングでは、愛犬の疲れやストレスを考慮し、所要時間が短いシンプルなコースを選ぶことや、何かあってもすぐにお迎えに行ける時間帯に予約するのもオススメです。

トリミングの頻度と費用の目安は?

トリミングサロンには、どのくらいのペースで通えばいいのでしょうか。
また、1回あたりの料金の相場も気になるところです。
ここでは、犬種ごとのトリミング頻度や、費用の目安を紹介します。

トリミングサロンはどのくらいの頻度で通えばいいの?

犬の毛質や被毛構造によって、トリミングの理想的な頻度は変わります。
ここでは特徴の異なる被毛タイプごとに目安を紹介します。

シングルコート(被毛が伸び続けるタイプ)

プードル、シーズー、マルチーズ、ヨークシャーテリア、ビションフリーゼなどは、毛が伸び続けるタイプのため、月に1回程度のトリミングが理想です。
毛玉ができやすく、放置すると通気性が悪くなり皮膚トラブルの原因になることも。定期的にカットやシャンプーを行うことで、清潔さと見た目の美しさを保てます。

ダブルコート(季節ごとに毛が抜け替わるタイプ)

柴犬、ポメラニアン、ウェルシュ・コーギー・ペンブローグ、ゴールデンレトリーバーなどは、換毛期に下毛が大量に抜けるため、1ヶ月~3ヶ月に1回程度のトリミングがオススメです。
普段は自宅でブラッシングを中心に行い、抜け毛が増える季節だけトリミングサロンでプロにケアしてもらうと良いでしょう。
お尻や足周りなど汚れやすい箇所は、部分カットで清潔さを保つのも◎です。

短毛種(ダブルコートの中でも短毛・短頭)

パグ、フレンチブルドッグ、チワワ(スムース)、ダックスフンド(スムース)などは被毛が短く、カットを必要としません。
ただし、皮脂や汚れがつきやすく、皮膚トラブルを起こすこともあります。
月に1~2回程度を目安にシャンプーで皮膚を清潔に保ちましょう。
特にパグやフレンチブルドッグなどの短頭種は、顔のしわや皮膚のたるみに汚れがたまりやすいため、定期的な洗浄と保湿ケアが大切です。

なお、これらの頻度はあくまで一般的な目安で、年齢や体調によって適切なケアは変わります。
特にトリミングに慣れていないパピーやシニア犬は疲れやすいため、トリミング時間を短めにしたり、いつもより間隔をあけたりと、無理のないスケジュールで調整してあげることが大切です。

犬のトリミングにかかる時間の目安は?

トリミングにかかる時間は、ワンちゃんの大きさやコース内容によって異なります。
カットを含むコースでは、小型犬でおよそ2〜3時間、中型犬で3〜3.5時間、大型犬では3〜6時間が目安です。
カットをしないコースの場合はもう少し短く、小型犬・中型犬で1.5〜2時間ほど、大型犬で2〜2.5時間程度が一般的です。
ただし、毛玉が多くて解くのに時間がかかったり、ワンちゃんがトリミングを嫌がったりすると、施術時間が長くなることもあります。
カットの注文内容や犬種によっても前後するため、あくまで目安として考えておきましょう。
日頃からブラッシングなどのグルーミングを行い、体に触れられることに慣らしておくと、施術がスムーズに進みやすくなります。

犬のトリミングにかかる費用の目安は?

トリミングの料金は、ワンちゃんの大きさやコース内容によって異なります。カットを含むコースでは、小型犬でおよそ5,000〜1万円 、中型犬で7,000〜1万2,000円、大型犬では1〜2万円程度が一般的な目安です。
最近では、デザイン性の高いカットや毛量の多い犬種の場合、小型犬でも1万2,000〜1万5,000円前後になるケースもあります。
特にビションフリーゼやトイプードルなどは、カット内容によって料金が高めになることがあります。

カットをしないコースの場合はやや安く、
小型犬で4,000〜7,000円、中型犬で6,000〜8,000円、
大型犬で8,000〜1万5,000円ほどが相場です。
ただし、毛玉が多かったり、汚れがひどい場合、あるいは噛み癖などで施術に時間がかかる場合は、追加料金が発生することがあります。

また、サロンの立地やサービス内容によっても料金は変わります。
事前にサロンへ問い合わせて、具体的な金額を確認しておくと安心です。

トリミングは自宅でも可能?リスクと注意点

「ハサミがあれば自分でもできそう」と思う方もいるかもしれません。
しかし、ハサミやバリカンを使ったトリミングは、プロのトリマーに任せるのが安心です。
自宅で無理に行うと、被毛を切りすぎたり皮膚を傷つけたりするおそれがあります。
特に顔周りや足裏、お尻などのデリケートな部分は、動いた拍子にケガをしてしまうことも。
トリマーはワンちゃんの体調や性格を見ながら、安全でストレスの少ない方法で施術してくれます。
自宅では、ブラッシングや爪切りなどの日常的なケアを中心に行い、カットや難しい部分はプロに相談するとよいでしょう。

トリミングは犬の健康を守るための大切なケア

ワンちゃんのトリミングは、美しさを整えるだけでなく、健康と衛生を保つために欠かせないケアです。
カットのほかにも、爪切り・耳掃除・肛門腺ケアなど、専門的な技術や判断が必要な工程が多くあります。
定期的にトリミングを行うことで、皮膚トラブルやケガの予防につながり、清潔で快適な状態を保てます。
こうしたケアは、トリマーや獣医師などのプロに相談・依頼するのが安心です。
大切な家族である愛犬が健やかに過ごせるよう、サロンでの定期的なケアを習慣にしていきましょう。

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